社会保険労務士法と労務管理・労働経済
ここまで法令を見てきましたが、この節は法律ではなく実務の枠組みです。テキストも「労務管理については、全体像だけおぼろげにつかめれば十分」と案内しています。
とはいえ、用語を入れ替えた選択肢は確実に出ます。特に「日本的雇用慣行の3つ」と「職務給と職能給」は、1語違うだけで誤りになるので、対比の形で押さえておきます。
簡単にいうと
3つ目が「産業別」になっている選択肢に注意します。
労務管理の主な内容は次のように分けられます。
・雇用管理
・職務・職能制度と人事考課
・賃金管理
・福利厚生管理
・教育訓練・能力開発
これまでの日本的雇用慣行としては、次の3つの特徴が挙げられます。
❶終身雇用制
❷年功賃金制
❸企業別労働組合
試験では、3つ目を「産業別労働組合」とする誤りの選択肢が出題されたことがあります。正しくは企業別労働組合です。欧米では産業ごとに組合を組織するのが一般的なのに対し、日本では会社ごとに組合を作るのが特徴だ、という文脈で語られます。
ただし、長い年月が経過する中で、日本的雇用慣行には本質的な変化が少しずつみられます。年齢や勤続年数といった外形的な要素で労働者を集団的に扱ってきた集団主義的な労働関係から、一人一人の能力形成と能力評価を軸とした個別的な労働関係が形成されてきています。
この「集団的から個別的へ」という流れは、労働契約法が個別の労働関係を対象にしていることや、個別労働紛争解決促進法が誕生した背景と一続きになっています。労一全体を貫く見取り図として押さえておくと理解が深まります。
具体例
会社ごとの労働組合に入る日本の会社員と、職種ごとの組合に入る欧米の労働者では、組織の作り方が違います。
試験のポイント
簡単にいうと
似た制度が対になって出てきます。方向と扱いで区別します。
雇用管理とは、募集、採用、配置、異動、昇進、昇格、休職、退職、解雇など、従業員が入社してから退職するまでの一連の管理のことをいいます。
配置管理では、2つの異動が対比されます。
・配置転換 … 昇進等を伴わない水平的異動。基本的な目的は「視野の広い人材の育成」「仕事への意欲の刺激」「不正防止」
・昇進 … 現在よりも上位の職務、職責、さらにより賃金の高い地位への垂直的異動
横に動くのが配置転換、上に動くのが昇進です。配置転換の目的に「不正防止」が入っている点が意外に見えますが、同じ人が同じ業務を長く担当すると不正が起きやすいため、定期的に人を替えるという発想です。
退職管理では、次のように分かれます。
・定年延長 … 定年年齢自体を引き上げること
・継続雇用制度 … 「再雇用制度」と「勤務延長制度」に分けられる
継続雇用制度の2つは、いったん辞めるかどうかで区別します。
・再雇用制度 … 定年年齢到達者を一度退職させ、再び雇用する制度。企業規模を問わず、勤務延長制度よりも広く定着している
簡単にいうと
「職務」は仕事に、「職能」は人に値段を付けます。
制度の側では2つが対比されます。
・職務等級制度 … 会社における職務を分析しその評価を行って職務を序列化し、その職務に適正な人材を配置し、給与、昇進、教育訓練等の労務管理を行う制度
・職能資格制度 … 人事考課により従業員を職務遂行能力に応じて格付けし、その決定された職務遂行能力に相応する職務に従業員を配置し、給与、昇進、教育訓練等の労務管理を行う制度
順番が逆になっている点が肝心です。職務等級制度は「職務を序列化してから人を配置」、職能資格制度は「人を格付けしてから職務に配置」します。仕事が先か、人が先かという違いです。
賃金の側でも同じ対比が現れます。
・職務給 … 職務そのものの難易度や責任の度合い等を評価して職務によって決定する賃金であり、同一労働同一賃金の原則に立つもの
・職能給 … 労働者の職務を遂行する能力(職務遂行能力)を基準として決定する賃金であり、日本で発達した。同一能力同一賃金を原則としており、配置転換等で職務が変動しても賃金は変わらない
職能給が日本で発達した理由は、配置転換の多い雇用慣行と相性がよいからです。仕事に値段が付いていると異動のたびに賃金が変わってしまいますが、人に値段が付いていれば異動しても賃金が動きません。日本的雇用慣行の3つとつながっている話になります。
簡単にいうと
「仕事給」と「属人給」はどちらも基本給の中にあります。
賃金体系とは、各人の個別賃金を決定する仕組みです。全体は次のように枝分かれします。
賃金
・所定内賃金
・基本給
・仕事給 … 職務給/職能給/職種給/業績給・成果給
・属人給 … 年齢給/勤続給/学歴給
・総合決定給
・諸手当 … 住宅手当/家族手当/役付手当 等
・所定外賃金 … 時間外勤務手当/休日出勤手当/深夜勤務手当 等
基本給は、一般に、本給、本俸、基本賃金などと呼ばれるもので、所定内賃金の大部分を占めます。また、時間外手当、賞与、退職金の算定基礎にも用いられます。
仕事給は、労働者の従事する仕事の種類・内容・成果等によって決定される賃金であり、職務給や職能給などがこれに当たります。
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・勤務延長制度 … 定年年齢到達者を退職させず、引き続き一定期間雇用する制度
再雇用制度のほうが広く定着している理由は、いったん退職させることで賃金や職務を組み直しやすいためです。この「再雇用制度のほうが広く定着している」という点が問われます。
高年齢者雇用安定法の高年齢者雇用確保措置は、定年の引上げ・継続雇用制度の導入・定年制の廃止の3択でした。ここでいう継続雇用制度が、再雇用制度と勤務延長制度の総称になります。
具体例
60歳でいったん退職して嘱託として契約し直すのが再雇用制度、そのまま在籍を続けるのが勤務延長制度です。
試験のポイント
具体例
経理から営業に異動しても給料が変わらないのは職能給、異動先の職務に応じて給料が変わるのが職務給です。
試験のポイント
試験では、仕事給とは労働者の従事する仕事の種類・内容・成果等によって決定される賃金であり基本給に属するものである、という記述が正しいものとして出題されています。仕事給が基本給の下位区分だという位置関係を押さえておきます。
属人給は、仕事の中身ではなく人の属性で決まる賃金です。年齢給・勤続給・学歴給がこれに当たり、日本的雇用慣行の年功賃金制と直結しています。
最後に労働費用です。企業は、労働者を雇うことに伴い、給与や社会保険料など、各種の費用を負担することとなります。この種の費用を総称して労働費用と呼びます。
賃金だけが労働のコストではない、というのがこの用語の要点です。社会保険料の事業主負担分や福利厚生費も含まれます。
具体例
月給の内訳のうち住宅手当は諸手当、残業代は所定外賃金、年齢に応じて上がる部分は属人給になります。
試験のポイント
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