雇用政策と職業紹介
労働者派遣法1条は、この法律が「職業安定法と相まって」労働力の需給の適正な調整を図るためのものだと定めています。職業安定法が原則として禁じた労働者供給事業のうち、一定の形態を切り出して合法化し、代わりに厳しいルールを課したのがこの法律です。
登場人物は3者です。派遣元と派遣先の間に労働者派遣契約、派遣元と労働者の間に雇用関係、労働者と派遣先の間に指揮命令関係。この三角形をまず頭に入れておくと、以降の規定がどちらの義務なのかを見失わずに済みます。
簡単にいうと
禁止業務は4つ。頭文字ではなく、性格で覚えます。
労働者派遣が禁止されている業務は次の4つです。
❶港湾運送業務
❷建設業務
❸警備業務
❹(一定の)医療関係業務
港湾運送・建設・警備は、いずれも現場での指揮命令系統が複雑になりやすく、安全確保や責任の所在があいまいになる業務です。医療関係業務は、チーム医療の中で指揮命令が分かれると患者の安全に関わるという理由になります。
医療関係業務には例外があります。原則は派遣禁止ですが、例えば現場で産休や育休をとる人がいてその代替要員として派遣される場合や、へき地における医療の場合には派遣が認められます。人がいなければ医療そのものが成り立たない場面では、禁止の理由より必要性が上回るということです。
事業を行うには許可が要ります。労働者派遣事業を行おうとする者は、厚生労働大臣の許可を受けなければなりません。許可の有効期間は当該許可の日から起算して3年で、更新後の有効期間は5年です。
この3年・5年という数字は、職業安定法の有料職業紹介事業とまったく同じです。あわせて覚えておくと効率的になります。
目的条文も押さえておきます。「派遣労働者の保護等を図り、もって派遣労働者の雇用の安定その他福祉の増進に資すること」が目的とされています。かつては事業の適正な運営の確保が前面に出ていましたが、現在は派遣労働者の保護が明記されています。
具体例
産休に入る看護師の代わりに看護師を派遣で受け入れることは、医療関係業務でも例外として認められます。
試験のポイント
簡単にいうと
派遣先に合わせるか、労使協定で決めるか。選べます。
派遣労働者の待遇を確保する方法は2つあります。
派遣先均等・均衡方式
派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する派遣先に雇用される通常の労働者の待遇との間において、当該派遣労働者及び通常の労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはなりません。
この方式を機能させるには、派遣先の賃金水準を派遣元が知る必要があります。そこで、派遣先になろうとする者は、労働者派遣契約を締結するに当たっては、あらかじめ、派遣元事業主に対し、当該労働者派遣に係る派遣労働者が従事する業務ごとに、比較対象労働者の賃金その他の待遇に関する情報その他の厚生労働省令で定める情報を提供しなければなりません。
比較対象労働者とは、派遣先に雇用される通常の労働者であって、職務の内容並びに当該職務の内容及び配置の変更の範囲が、当該労働者派遣に係る派遣労働者と同一であると見込まれるものなどをいいます。
労使協定方式
派遣元事業主は、一定の事項を労使協定に定め、その労使協定で定めた事項を遵守していれば、教育訓練及び福利厚生施設以外の派遣労働者の待遇は確保できているものとされます。
「以外の」という言い方に注意が必要です。教育訓練と福利厚生施設に関する待遇については労使協定方式によることができないため、これらの待遇については派遣先均等・均衡方式によらなければなりません。労使協定方式を選んでも、この2つだけは派遣先に合わせるということです。
簡単にいうと
最初から派遣として雇うなら明示。途中から派遣に回すなら同意です。
派遣元事業主は、労働者を派遣労働者として雇い入れようとするときは、あらかじめ、当該労働者にその旨を明示しなければなりません。
これに対し、直接雇用する者を途中から他社へ派遣就業させる場合には、その旨を明示するだけでは足りず、同意も得なければなりません。
2つの場面を分けて覚えます。
・派遣労働者として雇い入れる場合 … 明示のみ
・すでに直接雇用している者を派遣就業させる場合 … 明示+同意
違いの理由は、労働者の期待にあります。最初から派遣として雇われるなら、他社で働くことは織り込み済みです。ところが自社で働くつもりで入社した人を途中から他社に出すのは、契約の前提が変わることになります。だから本人の同意が必要になるということです。
この発想は、労働契約法の在籍出向と対比すると理解が深まります。在籍出向は就業規則等の条件が整っていれば個別的同意なしに命じられますが、派遣就業への切替えには同意が要ります。出向先でも自社の一員として扱われる出向と、指揮命令だけが移る派遣とでは、労働者にとっての意味が違うためです。
明示の時期は「あらかじめ」です。雇い入れた後で伝えるのでは足りません。
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条文の書きぶりは、パートタイム・有期雇用労働法8条とほぼ同じ形です。同一労働同一賃金の考え方が、雇用形態を変えて同じように置かれていることになります。
具体例
労使協定方式を採る派遣会社でも、派遣先の社員食堂や更衣室については派遣先の通常の労働者と同じ扱いをしなければなりません。

同一労働同一賃金の考え方の対比図。派遣の2つの方式と、労使協定方式によれない2つの待遇も添えています
試験のポイント
事務職として直接雇用していた社員を取引先へ派遣として送り出すには、本人の同意を得る必要があります。
試験のポイント
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