労働時間・休憩・休日
残業や休日出勤は、本来は労基法違反です。それを適法にする仕組みが36協定(サブロク協定)で、社労士試験でも実務でも最重要のテーマです。
この節では、36協定の効力と届出の関係、月45時間・年360時間の限度、特別条項の3つの数字、そして割増賃金(25%・35%・50%)までを一気に整理します。数字のオンパレードですが、出題はほぼこの数字から出ます。
簡単にいうと
原則は「残業も休日出勤もさせられない」。例外は災害などの緊急ルートと、36協定ルートの2つだけです。
使用者は、原則として法定労働時間を超えて労働させること、法定休日に労働させることはできません。これが認められるのは次の2つの場合だけです。
・臨時の必要がある場合 ― 災害その他避けることのできない事由や公務のため、臨時の必要があるとき。災害等による場合は、原則として労働基準監督署の許可が必要です
・36協定による場合 ― 労使協定(労働基準法36条に由来して36協定と呼ばれます)を締結し届け出たとき
実務の大半は36協定ルートです。以降のテーマで、この協定の効力・限度・割増賃金を順に見ていきます。
具体例
台風で堤防が決壊しそうになり、建設会社が緊急の復旧作業のため深夜まで作業員を働かせるのは「臨時の必要」ルートです(原則として監督署の許可が必要)。一方、繁忙期の残業は36協定ルートで対応します。
試験のポイント
簡単にいうと
36協定は「結んだだけ」では効きません。監督署への届出がスイッチです。しかも協定だけでは残業を命じる根拠になりません。
労使協定には、法違反を免れる効力(免罰的効力)があります。通常の労使協定は締結した時点でこの効力が生じますが、36協定だけは特別で、労働基準監督署への「届出」が効力発生要件です。届出まで完了しないと免罰的効力は発生しません。
もうひとつ重要なのは、36協定には民事的効力がないことです。締結・届出をしても、それだけで労働者に時間外・休日労働を強制することはできません。残業を命じる根拠にするには、就業規則などに「36協定の定めるところにより時間外労働をさせることがある」といった規定を別途置く必要があります。
なお、事業場の労働者の過半数で組織する労働組合と36協定を締結して届け出た場合、その協定の労基法上の効力は、組合員でない他の労働者にも及びます。
具体例
運送会社が36協定を締結したものの届出を忘れて残業させていた場合、免罰的効力が発生していないため労基法違反になります。また、届出まで済ませていても、就業規則に残業命令の根拠規定がなければ、ドライバーに残業を強制することはできません。
試験のポイント
簡単にいうと
残業の上限は月45時間・年360時間。繁忙期用の特別条項を付けても「月100時間未満・年720時間・45時間超は年6回まで」が天井です。
36協定で定める「延長できる時間」には限度時間があります。
・1か月 ― 45時間(対象期間3か月超の1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)
・1年 ― 360時間(同じく1年変形の場合は320時間)
繁忙期などに限度時間を超える必要がある場合は、特別条項付きの36協定を結ぶことで超過が可能になります。ただし特別条項には次の3つの上限を定める必要があります。
・1か月の時間外・休日労働の合計 ― 限度時間を含め100時間未満の範囲内
・1年の時間外労働 ― 協定した時間を含め720時間を超えない範囲内
・限度時間(月45時間)を超えられる月数 ― 1年について6か月以内
100時間未満は「時間外+休日労働」の合計、720時間は「時間外労働のみ」という対象の違いも出題ポイントです。
36協定で定める事項は、対象労働者の範囲、対象期間(1年間に限る)、延長できる場合、1日・1か月・1年それぞれの延長時間または休日日数、省令で定める事項の5つです。
簡単にいうと
協定に何と書いてあっても、実際の労働がこのラインを超えたら罰則。働き方改革で入った「本当の上限」です。
36協定の実効性を確保するため、実際の時間外・休日労働について、次の3つが使用者に義務付けられています。違反すると罰則(6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金)の対象になります。
・坑内労働などの健康上特に有害な業務については、1日の時間外労働は2時間を超えないこと
・1か月の時間外労働と休日労働の合計が100時間未満であること
・直前の2〜6か月間のどの期間をとっても、時間外労働と休日労働の合計の1か月平均が80時間を超えないこと
特別条項の上限が「協定に書ける枠」であるのに対し、こちらは実際の労働時間そのものの上限です。協定の範囲内でも、実労働がこのラインを超えれば罰則付きの違反になります。
なお坑内労働の1日2時間規制について、判例・通達は、休日については10時間を超えて休日労働をさせることを禁止する法意と解しています。
具体例
IT企業のプロジェクトが炎上し、ある月の時間外90時間・休日労働15時間になると、合計105時間で「100時間未満」の上限を超え、協定の内容にかかわらず会社は罰則の対象になります。
簡単にいうと
残業25%・休日35%・深夜25%。「深夜」は他と重なると足し算になるのに、「休日+残業」は足さない、が最大の引っかけです。
時間外労働・休日労働・深夜労働には割増賃金が必要です。
・時間外労働(法定労働時間を超えた労働)― 通常の賃金の25%以上
・休日労働(法定休日の労働)― 35%以上
・深夜労働(午後10時〜午前5時)― 25%以上
重なった場合の扱いに注意してください。
・時間外+深夜 ― 合算して50%以上
・休日+深夜 ― 合算して60%以上
・休日+時間外 ― 合算しません。休日労働が8時間を超えても35%のままです(休日には法定労働時間の概念がないため)
また、所定労働時間を超えても法定労働時間の枠内に収まる「法定内残業」には割増は不要です(超過分の通常の賃金は必要です)。
さらに、1か月60時間を超える時間外労働については、超過分の割増率が50%以上に引き上げられます。この上乗せ分は、労使協定を定めれば割増賃金の支払いに代えて代替休暇を与えることもできます。
簡単にいうと
割増の計算は「平均賃金」ではなく「通常の賃金」がベース。家族手当や通勤手当など個人的事情の手当は外して計算します。
割増賃金の基礎となる賃金は、平均賃金ではなく「通常の労働時間又は通常の労働日の賃金の計算額」です。具体的には、1時間当たりの賃金額に時間外・休日・深夜労働の時間数を掛けて計算します。
月給制の場合、1時間当たり賃金額は、月給を月の所定労働時間数(月によって異なる場合は1年間の1月平均所定労働時間数)で割った金額です。
次の7つの賃金は、割増賃金の計算基礎から除外されます。
・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当
・臨時に支払われた賃金
・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
この7つが除外されるのは、労働とは直接関係のない個人的事情に基づいて支払われるものだからです。名称ではなく実質で判断される点にも注意してください。
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食品工場がお歳暮シーズンに備えて特別条項を結ぶ場合でも、12月の時間外+休日労働を100時間未満に抑え、年間の時間外を720時間以内、月45時間超えは年6回までに収める必要があります。
試験のポイント
試験のポイント
具体例
所定労働が9時〜17時(休憩1時間・実働7時間)の会社で19時まで働くと、17〜18時は法定内残業で割増不要、18〜19時が時間外で25%以上です。休日に朝9時から23時まで働いた場合、22時までは35%、22時以降は休日+深夜で60%以上になります。

割増賃金のタイムライン
試験のポイント
具体例
月給24万円・家族手当2万円・通勤手当1万円、月平均所定労働時間160時間のはやとさんの場合、割増の基礎は24万円だけです。24万円÷160時間=1,500円が1時間当たり賃金となり、残業1時間につき1,500円×1.25=1,875円以上を支払います。
試験のポイント
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