労働時間・休憩・休日
外回りの営業やクリエイティブ職のように、働いた時間をきっちり測れない仕事のための仕組みが「みなし労働時間制」です。さらに、管理監督者や高度プロフェッショナル制度のように、労働時間規制そのものが適用されない働き方もあります。
この節は「時間で管理しない働き方」のルールをまとめて学ぶゾーンです。制度ごとの手続の違い(労使協定か、労使委員会の決議か)と数字を整理していきましょう。
簡単にいうと
「何時間働いたか測れないなら、この時間働いたことにしよう」という制度。まず3種類あることから押さえます。
労働時間は使用者がきっちり把握・管理するのが原則ですが、算定が困難な場合に限り、みなし労働時間制が認められています。種類は次の3つです。
・事業場外労働に関するみなし労働時間制
・専門業務型裁量労働制
・企画業務型裁量労働制
事業場外みなしは、外回りの営業のように労働時間の全部または一部を事業場の外で働き、労働時間を算定し難いときに使えます。この場合、原則として所定労働時間労働したものとみなされます。実際には短時間で業務が終わっても、所定労働時間働いた扱いになります。
ただし、その業務をこなすには通常所定労働時間を超える必要がある場合は、「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」労働したものとみなされます。この通常必要とされる時間は、労使協定で定めておくことも可能です。
注意したいのは「算定し難いとき」という要件です。スマートフォンなどで上司の具体的な指揮監督が及び、労働時間を把握できる場合には、この制度は使えません。
具体例
住宅リフォーム会社の営業のけんごさんは、直行直帰で1日中外回りをしており勤務の実態を会社が把握できません。所定労働時間が7時間なら、早く回り終えた日も7時間働いたとみなされます。ただし担当エリアが広く、どうしても9時間かかる業務なら「通常必要とされる時間=9時間」がみなし時間になります。

みなし労働時間制の3制度マップ
試験のポイント
簡単にいうと
研究者やシステム設計者など「進め方は本人に任せるしかない」専門職のための制度。対象業務は省令のリストで決まっています。
専門業務型裁量労働制の対象になるのは、業務遂行の手段や時間配分の決定が労働者自身に委ねられている、つまり労働者側に裁量権がある業務です。
対象となる「専門業務」は厚生労働省令(労働基準法施行規則)で具体的に列挙されています。代表例は次のとおりです。
・新商品・新技術の研究開発、人文科学・自然科学に関する研究の業務
・情報処理システムの分析又は設計の業務
・新聞・出版の記事の取材・編集、放送番組制作のための取材・編集の業務
採用するには労使協定を締結し、次の事項などを定める必要があります。
・労働時間として算定される時間(みなし労働時間)
・健康・福祉確保措置を使用者が講ずること
・苦情処理措置を使用者が講ずること
さらに、この制度を適用するには対象労働者個々人の同意が必要です。省令のリストにない業務に適用することはできません。
簡単にいうと
経営の中枢で企画・分析を担う人向けの制度。ハードルは高く、労使委員会の5分の4以上の議決が必要です。
企画業務型裁量労働制の対象は、事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務で、遂行手段や時間配分が労働者に委ねられているものです。通達では、大企業の事業運営に携わる幹部候補生などを想定した制度とされています。対象労働者は、対象業務を適切に遂行する知識・経験等を持つ者で、専門業務型と同じく個々人の同意が必要です。
採用の手続が専門業務型と大きく異なります。前提として労使委員会(賃金・労働時間など労働条件に関する事項を調査審議し、事業主に意見を述べる委員会)が設置された事業場でなければならず、その委員の5分の4以上の多数による議決で所定の事項を決議する必要があります。
この労使委員会には、企画業務型の実施決議のほかに、一定の労使協定に代えて決議を行える協定代替決議の機能があります。1か月単位の変形労働時間制、フレックス、36協定、年休の計画的付与など多くの協定を代替できますが、貯蓄金の管理と賃金の一部控除の2つだけは代替できません。
具体例
大手メーカー本社の経営企画部で中期経営計画の立案を担うたかしさんには、労使委員会の5分の4以上の議決と本人の同意があれば企画業務型裁量労働制を適用できます。支店の窓口業務のように定型的な仕事は「企画・立案・調査・分析」にあたらず対象外です。
試験のポイント
簡単にいうと
農業や管理職など「時間規制がなじまない」3タイプの人には、労働時間・休憩・休日のルールが丸ごと適用されません。
労働基準法41条は、次の労働者について労働時間、休憩及び休日に関する規定を適用しないと定めています。
・農業・畜産業・養蚕業・水産業に従事する者(天候や自然に左右される仕事のため)
・監督若しくは管理の地位にある者(管理監督者)又は機密の事務を取り扱う者
・監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が労働基準監督署長の許可を受けた者
適用除外になるのは「労働時間・休憩・休日」の規定だけです。深夜業の割増賃金や年次有給休暇の規定は適用されます。管理職でも深夜手当と年休はある、という点はよく出題されます。
監視・断続的労働(守衛や寮の管理人など)は、署長の許可が要件である点に注意してください。許可なく適用除外にすることはできません。
具体例
ビルの守衛として夜間の監視業務をするまさるさんについて、会社が労働基準監督署長の許可を受ければ、労働時間・休憩・休日の規制が適用されなくなります。ただし深夜割増賃金と年休は変わらず必要です。許可を取らずに残業代を払わないのは違法です。
簡単にいうと
「店長」の肩書きを付ければ残業代なし、とはいきません。経営者と一体といえる実態があるかで決まります。
管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいいます。一般的には部長や工場長などがイメージされますが、重要なのは役職の名称にとらわれず、実態に即して判断されることです。
判断の視点は、職務内容、責任と権限、勤務態様(出退勤の自由度)、地位にふさわしい待遇などです。肩書きだけ管理職にして権限も待遇も伴わないまま割増賃金を支払わない扱いは、いわゆる「名ばかり管理職問題」として社会問題になってきました。
試験でも「経験、能力等に基づく格付や地位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態に即して判断される」という通達の言い回しがそのまま出題されています。
具体例
ファストフード店の「店長」のゆうきさんが、アルバイトの採用権限も店の予算権限もなく、本部の指示どおりのシフトで働いているなら、名称は店長でも管理監督者とはいえず、残業代の支払いが必要です。
試験のポイント
簡単にいうと
年収1,075万円以上の高度専門職を時間規制から外す代わりに、健康を守る仕組みをがっちり義務付けた制度です。
高度プロフェッショナル制度(正式名称は特定高度専門業務・成果型労働制)は、働き方改革推進法で創設され、一定の要件のもとで労働時間・休憩・休日・深夜の割増賃金の規定を適用除外とする制度です。深夜の割増賃金まで除外される点が、管理監督者(深夜は適用)との大きな違いです。
要件は次のとおりです。
・対象業務 ― 高度の専門的知識等を必要とし、従事した時間と成果との関連性が通常高くないと認められる業務
・対象労働者 ― 書面等による合意で職務が明確に定められ、年収が1,075万円以上(賃金相場の3倍を相当程度上回る水準として省令で定める額)
・手続 ― 労使委員会の委員の5分の4以上の多数による議決+労働基準監督署への届出+本人の同意
さらに、次の3つのルールがどれひとつ欠けても制度は成り立ちません。
・健康管理時間(事業場内にいた時間+事業場外の労働時間の合計)の把握措置
・休日確保措置 ― 年間104日以上、かつ4週間を通じ4日以上の休日
・選択的措置 ― インターバル措置(24時間につき11時間以上の休息+深夜業は月4回以内)、健康管理時間の上限措置(週40時間超過分を月100時間以内又は3か月240時間以内)、連続休日確保措置(年1回以上の連続2週間)、臨時の健康診断措置(週40時間超過分が月80時間超の者等)のいずれか
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具体例
ゲーム会社の研究開発チームで新技術の研究をするさきさんには、労使協定で「1日8時間とみなす」と定め、本人の同意を得れば専門業務型裁量労働制を適用できます。一方、同じ会社でも一般の経理事務には、裁量権があるように見えても適用できません。
試験のポイント
試験のポイント
具体例
証券会社で金融商品開発を担う年収1,200万円のアナリストのれいさんに高プロを適用するには、労使委員会の5分の4以上の議決、監督署への届出、本人の同意に加え、年104日以上の休日確保などのルールを守る必要があります。
試験のポイント
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