労働基準法の全体像と労働契約
労働基準法はどの職場に適用され、誰が「労働者」で誰が「使用者」なのか。そして「賃金」や「平均賃金」とは何を指すのか。
この節は労基法全体の言葉のルールブックです。ここの定義があいまいだと後のすべての章がぼやけるうえ、定義規定はそのまま択一式・選択式の題材になります。ひとつずつ正確に固めましょう。
簡単にいうと
会社まるごとではなく「働いている場所ごと」に法律が適用される、という考え方です。
労働基準法の適用単位は、企業全体ではなく個々の事業場です。適用されるかどうかは基本的に場所的観念で決まるので、本社と支店が別の場所にあれば、原則としてそれぞれが独立した適用事業になります。
本社・支店・営業所・工場は、それぞれが「一の事業」として別々に労基法の適用を受けます。本社だけがルールを守っていればよい、というわけにはいきません。
また、原則として適用されない者・事業でも、例外的に一部適用される場合があります。表の組み合わせで押さえましょう。
具体例
たこ焼きチェーンを営むれいこさんの会社は、大阪本社と神戸支店を持っています。36協定などの手続きは会社で1回ではなく、本社と支店それぞれの事業場ごとに必要になります。場所が違えば別の事業、が原則です。
試験のポイント
簡単にいうと
肩書きや契約の名前ではなく、「指揮命令を受けて働き、賃金をもらっているか」で決まります。
労働基準法9条は、労働者を「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義しています。
実際にその人が労働者にあたるかどうかの決め手になるキーワードが「使用従属関係」です。使用者の指揮命令のもとで働き、その対価として賃金を受け取っていれば、契約の形式や呼び名に関係なく労働者と判断されます。
具体的な適用場面を2つ押さえましょう。
・インターンシップの学生 ― 実習が見学・体験にとどまり使用従属関係がなければ労働者ではありません。逆に直接生産活動に従事し使用従属関係が認められれば労働者に該当します
・会社役員 ― 役員は本来「使用者」側ですが、代表権を持たない役員が労働者としての要件を満たす場合には、労働者にも該当します
具体例
アパレル会社でインターン中の大学生ゆうまさんが、社員と同じシフトに組み込まれ、店長の指示で接客や品出しをして日当をもらっているなら、「体験」という名目でも使用従属関係があり労働者に該当します。見学ツアーだけなら労働者ではありません。
簡単にいうと
社長だけが使用者ではありません。人事の権限を持っていれば、部長さんも法律上は「使用者」です。
労働基準法10条は、使用者を「事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者」と定義しています。
具体的には次の3つに分かれます。
・事業主 ― 法人ならその法人そのもの、個人事業なら事業主個人
・事業の経営担当者 ― 社長、理事、支配人など
・事業主のために労務管理を行うすべての者 ― 人事部長、労務課長など
「人事部長」「労務課長」はあくまで例示です。使用者にあたるかどうかは役職名という形式ではなく、実態として一定の権限を与えられているかで個別に判断されます。
試験では「事業主のために行為をする管理監督者以上の者をいう」という誤りの選択肢が出題されたことがあります。正しくは「すべての者」であり、管理監督者以上に限定されません。
具体例
簡単にいうと
呼び名が給与でも賞与でも手当でも、労働の対価ならぜんぶ「賃金」。お祝い金は原則違うけれど、例外があります。
労働基準法11条の賃金とは、労働の対価として使用者が労働者に支払うもののことです。「給与」「賞与」「手当」といった呼び名には関係なく、労働の対価であればすべて賃金にあたります。
一方、結婚祝金・見舞金・退職金のような任意的・恩恵的な給付は、原則として賃金にはなりません。会社の「気持ち」であって労働の対価ではないからです。
ただし重要な例外があります。労働協約・就業規則・労働契約などで、あらかじめ支給条件が明確に定められている場合には、その祝金や退職金は賃金にあたると解釈されます。支給条件が決まっていれば労働者に請求権が生まれ、保護する必要があるためです。
試験では「支給条件が明確にされていても恩恵的な見舞金は賃金にあたらない」という誤りの選択肢が出題されたことがあります。条件が明確なら賃金にあたる、が正解です。
具体例
ゲーム会社の就業規則に「結婚したら祝金5万円を支給する」と明記されていれば、この祝金は賃金です。一方、社長が個人的な厚意でその都度金額を決めて渡すお見舞金は、賃金ではありません。
試験のポイント
簡単にいうと
「直近3か月の1日あたり賃金」を出す計算で、解雇予告手当や休業手当など5つの場面でだけ使われます。
平均賃金とは、直近3か月間で見た1日当たりの平均賃金のことです。正確には「算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」と定義されます(労働基準法12条)。
計算式にすると次のとおりです。
・平均賃金 = 算定事由発生日以前3か月間の賃金総額 ÷ その期間の総日数
分母が「労働日数」ではなく暦の「総日数」である点に注意してください。なお、賃金締切日がある場合は、直前の賃金締切日から起算します。
平均賃金が登場する場面は労基法の中で5つだけです。それぞれの算定事由発生日とセットで覚えると、どこから3か月さかのぼるのかが明確になります。
具体例
カフェ店員のななみさんが8月1日に休業手当の計算対象になった場合、直前の賃金締切日からさかのぼった3か月間の賃金総額を、その期間の暦日数で割って平均賃金を出します。ボーナス月かどうかで有利不利が出ないよう、次のテーマの除外ルールも組み合わさります。

簡単にいうと
ケガで休んだ期間やボーナスをそのまま計算に入れると金額がゆがむので、除外するルールがあります。
平均賃金の計算では、額が不当に下がったり上がったりしないよう、除外ルールが設けられています。
まず、次の5つの期間は、その期間中の「日数」と「賃金」の両方を算定ベースから除きます。休んで賃金が減った期間をそのまま分母に入れると、平均賃金が極端に下がってしまうからです。
・業務上の負傷・疾病の療養のために休業した期間
・産前産後の女性が65条の規定によって休業した期間
・使用者の責めに帰すべき事由により休業した期間
・育児休業・介護休業をした期間
・試みの使用期間
次に、以下の2つの賃金は賃金総額から除きます。
・臨時に支払われた賃金
・3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(夏と冬のボーナスが典型)
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試験のポイント
試験のポイント
平均賃金の計算式と除外ルール
試験のポイント
具体例
5月1日から20日間、業務上のけがで休業したはるとさんの平均賃金を8月1日に計算する場合、3か月92日から休業20日を引いた72日を分母に、賃金総額から休業期間の賃金を除いた額を分子にします。直近6月に出た夏のボーナスは総額に入れません。
試験のポイント
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