企業年金と個人型年金
確定拠出年金とは、企業や加入者が拠出した掛金を個人ごとに明確に区分して積み立て、加入者が自ら資金の運用を指図して、掛金と運用益の合計額をもとに将来の給付額が決まる年金です。
前の節の確定給付企業年金とちょうど裏返しの関係になります。あちらは給付額が確定し掛金が動く、こちらは掛金が確定し給付額が動く。この対比を土台に、企業型と個人型(iDeCo)の違いを重ねていくのが理解の道筋です。
簡単にいうと
「確定」しているのが給付か掛金か。名前がそのまま答えです。
従来の企業年金等は、あらかじめ将来の給付額が約束されており、運用成果によって掛金が変動します(確定給付型)。
一方で、確定拠出年金は、掛金は確定した額ですが、個人の運用成果により給付額が増減するため、将来の給付額は未確定であり、自己責任型の年金であるといえます。
リスクの持ち主が入れ替わっている、と言い換えられます。
・確定給付型 … 運用がうまくいかなければ事業主が掛金を増やして穴を埋める(事業主がリスクを負う)
・確定拠出型 … 運用がうまくいかなければ将来の給付が減る(加入者がリスクを負う)
確定拠出年金には2つの形があります。
・企業型年金 … 厚生年金適用事業所の事業主が、単独で又は共同して、実施する年金制度
・個人型年金(iDeCo)… 国民年金基金連合会が実施する年金制度
実施する主体がまったく違う点が出発点になります。企業型は事業主、個人型は国民年金基金連合会です。
国民年金基金連合会は、国民年金基金の中途脱退者に係る年金の支給を引き受ける団体でもありました。国民年金法の側でも「連合会はiDeCoの実施者」と説明されており、両方の科目から同じ団体が顔を出すことになります。
具体例
同じ月2万円を積んでも、確定給付型なら約束された額が、確定拠出型なら運用しだいの額が将来受け取れます。

2つの企業年金の対比表。確定拠出年金で運営管理と資産管理が逆になることも添えています
試験のポイント
簡単にいうと
運営管理と資産管理。2つの業務でルールが逆転します。
企業型年金と個人型年金の違いは、運営管理業務と資産管理をめぐる3点に集約されます。
企業型年金
・厚生年金適用事業所の事業主が実施する
・事業主は自ら運営管理業務を行うことができる(政令で定めるところにより、運営管理業務の全部又は一部を運営管理機関に委託することもできる)
・事業主は、資産管理を自ら行うことはできず、資産管理機関と資産管理契約を締結しなければならない
個人型年金
・国民年金基金連合会が実施する
・国民年金基金連合会は、運営管理業務を自ら行うことはできないため、確定拠出年金運営管理機関に委託しなければならない
・国民年金基金連合会は、資産管理機関の役割も兼ねる
2つ目と3つ目がきれいに逆になっています。
簡単にいうと
上限と下限が両方あります。簡易企業型年金だけ2以上でよくなります。
企業型運用関連運営管理機関等は、対象運用方法を、原則として企業型年金加入者等による適切な運用の方法の選択に資するための上限として政令で定める数(=35)以下で、かつ3つ以上で選定し、企業型年金規約で定めるところにより、企業型年金加入者等に提示しなければなりません。
上限が35、下限が3つです。上限があるのは、選択肢が多すぎると加入者が選べなくなるためです。下限があるのは、選択肢が少なすぎると自己責任で運用するという前提が成り立たないためになります。
例外があります。簡易企業型年金を実施する事業主から委託を受けて運用関連業務を行う確定拠出年金運営管理機関にあっては、2以上でよいとされています。
簡易企業型年金とは、次の要件に適合する企業型年金です。設立の際の負担の軽減を図るため、設立の際に必要な書類のうち一定のものの添付を省略することができます。
①実施事業所に使用されるすべての第1号等厚生年金被保険者(厚生労働省令で定める者を除く)が実施する企業型年金の企業型年金加入者の資格を有すること
②実施する企業型年金の企業型年金加入者の資格を有する者の数が300人以下であること
③その他厚生労働省令で定める要件
300人以下という規模の要件が入っています。中小企業向けの簡便な仕組みだということです。
簡単にいうと
確定給付企業年金とは給付の顔ぶれが違います。
確定拠出年金の給付は、企業型・個人型ともに原則として次の3つで、当分の間、脱退一時金も支給されます。
・老齢給付金
・障害給付金
・死亡一時金
確定給付企業年金と並べると顔ぶれが違います。
・確定給付企業年金 … 法定給付は老齢給付金と脱退一時金、任意給付は障害給付金と遺族給付金
・確定拠出年金 … 老齢給付金・障害給付金・死亡一時金(+当分の間の脱退一時金)
違いは2点です。確定拠出年金では障害給付金が任意ではなく原則の給付になっており、遺族向けの給付が「遺族給付金」ではなく「死亡一時金」という一時金の形になっています。個人ごとに資産が区分されているため、残高をそのまま一時金で渡すのが自然だからです。
掛金についても両方の型で規定があります。
・企業型年金 … 事業主は、年1回以上、定期的に掛金を拠出しなければならない。また、企業型年金加入者もこれに上乗せして拠出することができる
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・資産管理 … 企業型は自分でできない、個人型は自分で兼ねる
事業主が資産管理をできないのは、企業が倒産したときに年金資産が巻き込まれるのを防ぐためです。資産管理機関とは、年金資産を企業自身の資産から切り離して給付を行うまでの長期間にわたって管理する役割を果たす機関(信託会社、信託業務を営む金融機関、企業年金基金、存続厚生年金基金、生命保険会社、農業協同組合連合会又は損害保険会社)をいいます。
国民年金基金連合会は公的な団体なので、倒産のおそれを考える必要がありません。だから自ら資産管理機関の役割を果たせる、という理屈になります。
企業型年金の運営管理業務は、記録関連業務と運用関連業務に分かれます。記録関連業務は加入者等の氏名、住所、個人別管理資産額その他の事項の記録、保存及び通知、運用の指図の取りまとめ及び資産管理機関への通知、給付を受ける権利の裁定です。運用関連業務は運用の方法の選定及び加入者等に対する提示並びに運用の方法に係る情報提供になります。
具体例
会社が自前で加入者の記録を管理することはできますが、年金資産そのものは必ず信託銀行などに預けます。
試験のポイント
下限の3つは企業型・個人型で共通です。上限の35は企業型に関する条文に現れます。
具体例
従業員250人の会社が簡易企業型年金を実施すれば、提示する運用方法を2つにとどめることもできます。
試験のポイント
「年1回以上、定期的に」という表現は確定給付企業年金と共通です。ただし拠出する主体が違い、企業型は事業主が義務を負い、個人型は加入者本人が義務を負います。
拠出できる掛金の額には限度があります。また、一定の要件を満たした従業員300人以下の中小企業は、個人型年金に加入する従業員のために掛金を拠出することができます。
個人型年金の加入者は、自営業者等、会社員(要件を満たせば企業型年金や確定給付企業年金との同時加入も可能)、公務員、専業主婦等です。国民年金の第1号から第3号までのすべての被保険者に道が開かれているということになります。
具体例
会社の企業型年金に入っている人でも、要件を満たせばiDeCoに同時加入して自分でも積み増せます。
試験のポイント
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