高齢者の医療を支える仕組み
高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)は、平成18年の医療構造改革により、それまでの老人保健法が大きく改正されて生まれた法律です。平成20年4月から施行されています。
背景にあるのは急速な少子高齢化です。国民皆保険を維持し、将来にわたり持続可能なものとするために、医療費の適正化対策と高齢者医療の再編を一体で進める法律になっています。
この法律の核は「2つの高齢者」です。前期高齢者と後期高齢者で、まったく違う仕組みが用意されています。
簡単にいうと
この法律の設計図が、そのまま1条に書いてあります。
高齢者医療確保法1条は次のように定めています。
「この法律は、国民の高齢期における適切な医療の確保を図るため、医療費の適正化を推進するための計画の作成及び保険者による健康診査等の実施に関する措置を講ずるとともに、高齢者の医療について、国民の共同連帯の理念等に基づき、前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整、後期高齢者に対する適切な医療の給付等を行うために必要な制度を設け、もって国民保健の向上及び高齢者の福祉の増進を図ることを目的とする。」
長い条文ですが、内容は4つに分解できます。
・医療費の適正化を推進するための計画の作成
・保険者による健康診査等の実施に関する措置
・前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整
・後期高齢者に対する適切な医療の給付等
用語の定義は次のとおりです。
・前期高齢者 … 65歳以上75歳未満の者
・後期高齢者 … 75歳以上の者
この2つの高齢者にまつわる規定が、この法律の核となります。前期高齢者については「費用負担の調整」だけを行い、後期高齢者については独立した医療制度を作るという、まったく違う扱いになっている点が最大のポイントです。
基本理念も押さえておきます。国民は、自助と連帯の精神に基づき、自ら加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、高齢者の医療に要する費用を公平に負担するものとされています。また国民は、年齢、心身の状況等に応じ、職域若しくは地域又は家庭において、高齢期における健康の保持を図るための適切な保健サービスを受ける機会を与えられるものとされています。
具体例
70歳の人は前期高齢者として国民健康保険などに加入したままですが、75歳になると後期高齢者医療の被保険者に移ります。
試験のポイント
簡単にいうと
どちらの責務かを入れ替えた選択肢が出ます。
国と地方公共団体の責務は、それぞれ別の条文に置かれています。
国の責務
国は、国民の高齢期における医療に要する費用の適正化を図るための取組が円滑に実施され、高齢者医療制度の運営が適切に行われるよう必要な各般の措置を講ずるとともに、医療、公衆衛生、社会福祉その他の関連施策を積極的に推進しなければならないとされています。
地方公共団体の責務
地方公共団体は、住民の高齢期における医療に要する費用の適正化を図るための取組及び高齢者医療制度の運営が適切かつ円滑に行われるよう所要の施策を実施しなければならない、と規定されています。
見分け方は主語の後ろの言葉です。
・国 …「国民の」高齢期における医療に要する費用
・地方公共団体 …「住民の」高齢期における医療に要する費用
国は全国民、地方公共団体は自分の区域の住民を見るという役割分担が言葉に表れています。
試験では、地方公共団体の責務の条文をそのまま持ってきて主語を「国」に差し替えた誤りの選択肢が出題されたことがあります。国は「必要な各般の措置を講ずる」、地方公共団体は「所要の施策を実施する」という語尾の違いもあわせて押さえておきます。
簡単にいうと
市町村でも都道府県でもなく、市町村が全部集まった組織です。
後期高齢者医療制度においては、都道府県ごとにすべての市町村が加入する後期高齢者医療広域連合が運営の主体となります。すなわち実質的な保険者です。
「都道府県ごとに」「すべての市町村が加入する」という2つの条件がそろっている点が特徴です。都道府県そのものが保険者になるのではなく、その区域内の市町村が全部入った連合体が担当します。
保険事故は、高齢者の疾病、負傷又は死亡です。国民健康保険の保険事故が疾病、負傷、出産又は死亡であるのに対し、後期高齢者医療には「出産」という保険事故が規定されていません。75歳以上を対象とする制度なので、出産を想定する必要がないためです。
被保険者となるのは次のいずれかに該当する者です。
❶後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有する75歳以上の者
❷後期高齢者医療広域連合の区域内に住所を有する65歳以上75歳未満の者であって、厚生労働省令で定めるところにより、政令で定める程度の障害の状態にある旨の当該後期高齢者医療広域連合の認定を受けた者
❷が重要です。75歳未満でも、一定の障害の状態にある旨の認定を受ければ後期高齢者医療の被保険者になります。年齢だけで決まるわけではないということです。
認定を行うのは後期高齢者医療広域連合であって、市町村や都道府県ではありません。
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この「必要な各般の措置」という言い方は、国民健康保険法における国の義務の条文にも使われています。国の責務は各般の措置、というパターンで覚えると迷いません。
具体例
市が高齢者向けの健康づくり教室を開くのは、地方公共団体としての所要の施策の実施に当たります。
試験のポイント
国民健康保険では、後期高齢者医療の被保険者は適用除外とされていました。75歳になると自動的に国民健康保険や健康保険から抜けて、こちらに移るという関係になります。
具体例
68歳で一定の障害の状態にある旨の認定を受けた人は、75歳を待たずに後期高齢者医療の被保険者になります。

社一の主要3制度を並べた横断表。後期高齢者医療だけ保険事故に出産がないことが分かります
試験のポイント
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