地域が担う医療保険
国民健康保険の給付は、健康保険とよく似た顔ぶれが並びます。違うのは「必ず行うのか、行わないこともできるのか」という区分があることです。市町村や組合ごとに事情が違うため、給付を3段階に分けています。
もうひとつの山場が、保険料を滞納したときの流れです。1年と1年6月という2つの節目で扱いが変わっていきます。
簡単にいうと
傷病手当金と出産手当金が任意給付である点が最大の違いです。
国民健康保険の保険給付は3つのカテゴリーに分かれます。
絶対的必要給付(必ず行わなければならない給付)
療養の給付、入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、特別療養費、移送費、高額療養費、高額介護合算療養費
相対的必要給付(原則として行わなければならないが、特別の理由があるときはその全部又は一部を行わないことができる給付)
出産育児一時金、葬祭費の支給又は葬祭の給付
任意給付(行うかどうかは市町村及び組合の自由である給付)
傷病手当金、出産手当金
健康保険と並べると違いが際立ちます。健康保険では傷病手当金も出産手当金も法定の給付ですが、国民健康保険では任意給付です。
理由は対象者の性質にあります。傷病手当金と出産手当金は、働けない期間の所得を補う給付です。雇われて給料をもらっている人であれば「働けない=収入が止まる」という関係がはっきりしますが、自営業者の場合は休業と収入の関係が一様ではありません。そのため一律に義務づけず、保険者の判断に委ねているということです。
特別療養費が絶対的必要給付に入っている点も国民健康保険特有です。健康保険にはない給付になります。
一部負担金にも違いがあります。70歳以上の被保険者は原則2割負担で療養の給付を受けられますが、一定以上所得者は原則3割負担です。この「一定以上所得者」について、健康保険法では標準報酬月額28万円以上の者とされますが、国民健康保険では標準報酬月額の概念がないため所得額145万円以上の者となります。高額療養費においても所得額によって自己負担上限額(高額療養費算定基準額)が定められています。
具体例
自営業の人がインフルエンザで1週間休んでも、市町村が任意給付として定めていなければ傷病手当金は出ません。
試験のポイント
簡単にいうと
2つの節目で扱いが変わります。図で流れを追うと迷いません。
保険料を滞納したときの流れは、期間の経過とともに段階的に厳しくなります。
納期限から1年が経過するまでの間
市町村及び国民健康保険組合が保険料納付の勧奨等を行ってもなお当該保険料を納付しない場合においては、原則として、当該世帯に属する被保険者が保険医療機関等から療養を受けたとき、又は指定訪問看護事業者から指定訪問看護を受けたときは、その費用について、療養の給付等(現物給付)に代えて、当該保険料滞納世帯主等に対し特別療養費(現金給付)を支給します。
つまり、被保険者はいったん医療費の全額を支払わなければならず、事後に現金給付を受けることになります。窓口で全額払うのは重い負担なので、事実上の制裁として機能します。
納期限から1年6月間が経過するまでの間
市町村及び組合は、保険給付を受けることができる世帯主又は組合員が保険料を滞納しており、かつ当該保険料の納期限から1年6月間が経過するまでの間に当該保険料を納付しない場合においては、保険給付の全部又は一部の支払を一時差し止めるものとされています。
流れをまとめると次のようになります。
・納期から1年 … 療養の給付等(通常どおり)
・1年経過 … 被保険者証の返還、被保険者資格証明書の交付。以後は特別療養費の支給となり、療養の給付等は受給不可(出産・死亡給付を除く)
簡単にいうと
「行われない」「全部又は一部を行わないことができる」「一部を行わないことができる」。
給付制限の規定は3つあり、語尾が段階的に緩くなります。
犯罪又は故意による場合
被保険者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に疾病にかかり、又は負傷したときは、当該疾病又は負傷に係る療養の給付等は行われません。
闘争、泥酔又は著しい不行跡による場合
被保険者が闘争、泥酔又は著しい不行跡によって疾病にかかり、又は負傷したときは、当該疾病又は負傷に係る療養の給付等は、その全部又は一部を行わないことができます。
療養に関する指示に従わない場合
市町村及び組合は、被保険者又は被保険者であった者が、正当な理由なしに療養に関する指示に従わないときは、療養の給付等の一部を行わないことができます。
並べると次のようになります。
・故意の犯罪行為・故意 … 行われない(絶対的)
・闘争・泥酔・著しい不行跡 … 全部又は一部を行わないことができる(裁量的・範囲が広い)
簡単にいうと
都道府県が行うものと組合が行うもので、公費の入り方が違います。
公費負担は、都道府県等が行う国民健康保険と組合が行う国民健康保険で分かれます。
事務の執行に要する費用
・都道府県等 … 定めなし
・組合 … 国の費用
療養の給付等に関する費用
・都道府県等 … 国の負担。都道府県に対し、一定額の合算額の100分の32
・組合 … 国の補助。一定額の合算額の100分の13から100分の32までの範囲内において政令で定める割合
国の調整交付金
・都道府県等 … 算定対象額の100分の9
都道府県の特別会計への繰入
・都道府県等 … 算定対象額の100分の9
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・1年6月経過 … 保険給付の一時差し止め。特別療養費も止まる
・保険料完納 … 一時差し止めの解除、療養の給付等の再開。一時差し止め分の特別療養費が支給される
完納すれば止めていた分も支払われる点が重要です。給付を奪うのではなく、納付を促すための仕組みだということになります。
試験では、被保険者資格証明書の交付を受けている被保険者が療養を受けたときに支給されるのは「療養費」である、という誤りの選択肢が出題されたことがあります。正しくは特別療養費です。
具体例
保険料を1年3か月滞納している世帯の人が受診すると、窓口でいったん全額を払い、後から特別療養費を受け取ります。
試験のポイント
本人の落ち度が大きいほど制限が重くなるという順序です。この3段階の構造は健康保険法とまったく同じ形になっています。
試験では、闘争、泥酔または著しい不行跡によって疾病にかかりまたは負傷したときは療養の給付等の全部または一部を行わないことができる、という記述が正しいものとして出題されています。
具体例
けんかでけがをした場合は給付の全部又は一部を止められますが、医師の指示に従わなかった場合は一部だけです。
試験のポイント
特定健康診査等に要する費用
・都道府県等 … 国の負担3分の1、都道府県の特別会計への繰入3分の1
・組合 … 国が一部補助できる
国の調整交付金と都道府県の特別会計への繰入がどちらも100分の9で並んでいる点が覚えどころです。
保険料については、市町村又は組合が、保険給付等、国民健康保険事業に要する費用に充てるため、世帯主又は組合員から徴収します。賦課額、保険料率、納期、減額賦課その他保険料の賦課及び徴収等に関する事項は、政令で定める基準に従って条例又は規約で定めます。つまり保険者によってルールが異なるということです。
徴収の方法は2つあります。
・特別徴収 … 原則として、公的年金給付(年額18万円以上)から天引きの形で徴収する
・普通徴収 … 特別徴収ができない場合に、市町村が当該世帯主に直接、納入の通知をすることによって徴収する
年額18万円という基準は、介護保険料の特別徴収と同じ考え方です。年金額が少ない人から天引きすると生活が立ちゆかなくなるため、下限が設けられています。
具体例
年金を年200万円受けている自営業引退者の国民健康保険料は、原則として年金から天引きされます。

公費負担の割合一覧。国民健康保険の100分の32が他制度とどう並ぶかを確認できます
試験のポイント
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