船員保険と児童手当
テキストは「船員保険で一番重要なのは、その歴史」と言い切っています。昭和15年に総合型保険として生まれ、2度にわたって縮小され、いまの姿になった。この流れをつかめば、なぜ給付の顔ぶれがこうなっているのかが分かります。
そして残った部分には、健康保険や労災保険より手厚い独自の給付があります。数字が3年・3か月・100%と並ぶので、そこも押さえどころです。
簡単にいうと
年金・医療・労災・失業を全部持っていた時代がありました。
船員保険の歴史は3段階で押さえます。
【昭和15年】
船員のための総合型保険(年金・医療・労災・失業を包含する広い内容)として登場した
【昭和61年】
職域外年金部門が厚生年金保険に統合された(第1次縮小)
【平成22年】
職務上疾病・年金部門は労災保険へ、失業部門は雇用保険へ統合された(第2次縮小)
現在の体制は次のようになります。
・船員保険制度 … 職務外疾病部門(医療保険)+独自給付。管掌は全国健康保険協会
・職務上疾病・年金部門(労災保険相当部分)… 労災保険制度に統合。管掌は政府
・失業部門(雇用保険相当部分)… 雇用保険制度に統合。管掌は政府
年号と統合先をセットで覚えます。昭和61年は年金で厚生年金保険へ、平成22年は労災と失業で労災保険・雇用保険へ、という並びです。
目的条文にもこの構造が表れています。船員保険法は、船員又はその被扶養者の職務外の事由による疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行うとともに、労働者災害補償保険による保険給付と併せて船員の職務上の事由又は通勤による疾病、負傷、障害又は死亡に関して保険給付を行うこと等により、船員の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的としています。
「労働者災害補償保険による保険給付と併せて」という言葉が入っている点が特徴です。労災保険に統合した後も、船員保険が上乗せ部分を担っていることを示しています。
具体例
船員が仕事中にけがをすると労災保険から給付が出て、その上に船員保険から独自の給付が乗ります。
試験のポイント
簡単にいうと
健康保険と同じ全国健康保険協会が保険者です。
船員保険の保険者は、健康保険の保険者でもある全国健康保険協会(協会)です。
船員保険事業に関して船舶所有者及び被保険者(その意見を代表する者を含む)の意見を聴き、当該事業の円滑な運営を図るため、協会に船員保険協議会が置かれます。
試験では、船員保険は健康保険法による全国健康保険協会が管掌し、船員保険事業に関して船舶所有者及び被保険者の意見を聴き、当該事業の円滑な運営を図るため全国健康保険協会に船員保険協議会を置く、という記述が正しいものとして出題されています。
被保険者は次の2種類です。
❶船員として船舶所有者に使用される者
❷疾病任意継続被保険者
❷の名前に注意が必要です。健康保険では「任意継続被保険者」ですが、船員保険では「疾病任意継続被保険者」と呼びます。職務外疾病部門しか残っていないため、疾病に関する任意継続だという意味です。
使用者を「事業主」ではなく「船舶所有者」と呼ぶ点も特徴になります。厚生年金保険でも船舶に関する規定では船舶所有者という言葉が使われていました。
費用負担については、船員保険の保険料は、健康保険法の保険料と同様に、介護保険第2号被保険者については一般保険料額と介護保険料額との合算額とされ、保険料の納付期日は翌月末日とされています。また、他の社会保険と同様に国庫負担規定があります。
簡単にいうと
健康保険より長く、しかも待たずに出ます。
健康保険との違いのうち、給付面で大きいものが2つあります。
療養の給付の範囲
船員保険の療養の給付には次のものが含まれます。
・診察
・薬剤又は治療材料の支給
・処置、手術その他の治療
・居宅における療養上の管理及びその療養に伴う世話その他の看護
・病院又は診療所への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
・船舶以外の場所における療養に必要な宿泊及び食事の支給
最後の「船舶以外の場所における療養に必要な宿泊及び食事の支給」が、健康保険にはない要素です。航海中に体調を崩して寄港地で療養する、といった場面を想定した給付になります。
傷病手当金
簡単にいうと
労災の給付に上乗せする差額と、船ならではの給付です。
船員保険独自の給付が2つあります。どちらも労災保険より手厚い部分を担います。
休業手当金
例えば、仕事中のケガがもとで休業を余儀なくされた場合、労災保険から休業補償給付が出ます。しかし、もともと船員保険は支給水準が高く、通常の給料水準の100%が支給される仕組みでした。そこで労災との差額部分が船員保険から支給されます。この差額部分を「休業手当金」といいます。
労災保険の休業補償給付は給付基礎日額の100分の60(特別支給金を加えて100分の80)です。100%との差額を船員保険が埋めるという関係になります。
行方不明手当金
被保険者が職務上の事由により行方不明となったときは、その期間、被扶養者に対し行方不明手当金が支給されます。支給額は1日につき、行方不明となった当時の標準報酬日額に相当する額です。
支給期間は、被保険者が行方不明となった日の翌日から起算して3か月を限度とされています。
試験では、その支給を受ける期間は被保険者が行方不明となった日から起算して6か月を限度とする、という誤りの選択肢が出題されたことがあります。誤りは2か所です。起算日が「日から」ではなく「日の翌日から」、期間が「6か月」ではなく「3月」になります。
動画・テキスト・過去問・図解まですべて網羅!
予備校代の1/10以下で、独学の不安をまるごと解決できます
一般保険料率は2つの率の合計です。
・疾病保険料率 … 1,000分の40から1,000分の130までの範囲内
・災害保健福祉保険料率 … 1,000分の10から1,000分の35までの範囲内
いずれも全国健康保険協会が決定します。範囲の数字(40〜130、10〜35)が問われます。
具体例
貨物船の乗組員は船員保険の被保険者となり、下船して要件を満たせば疾病任意継続被保険者になれます。
試験のポイント
また、船員保険の傷病手当金には待期の概念がありません。健康保険では継続した3日間の待期が必要ですが、船員保険では初日から支給されます。
船の上では自宅で休むという選択ができず、代わりの人員もすぐには手配できません。そうした働き方の特殊性が、給付を手厚くする理由になっています。
時効についても押さえておきます。船員保険の時効は、健康保険や労災保険に準じて定められています。船員保険独自の給付である休業手当金や行方不明手当金の時効はいずれも2年です。
具体例
船員が長期療養に入った場合、健康保険の1年6か月より長く、通算3年まで傷病手当金を受けられます。
試験のポイント
不服申立ては、処分の種類によって審級が変わります。
・被保険者の資格、標準報酬又は保険給付に関する処分 … 社会保険審査官に審査請求、その決定に不服なら社会保険審査会に再審査請求(二審制)
・保険料等の賦課若しくは徴収の処分又は滞納処分 … 社会保険審査会に審査請求(一審制)
この構造は健康保険とまったく同じです。
具体例
航海中に船員が海に転落して行方不明になった場合、被扶養者に3か月を限度として手当金が支給されます。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥7,800/ 購入日から1年間有効(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。