高齢者の医療を支える仕組み
前期高齢者には、後期高齢者医療のような独立した制度がありません。65歳から74歳の人は、それまで入っていた医療保険にそのまま加入し続けます。
それでは何が問題になるのか。人が偏るのです。この節では、その偏りを是正する仕組みと、医療費そのものを抑えるための計画・健診の制度を扱います。
簡単にいうと
定年退職で被用者保険から国保へ移る。そこから話が始まります。
前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整が置かれた理由は、次の順序で説明できます。
・前期高齢者(65歳〜74歳)は、若い世代と比較すると、医療費が高くなりがち
・前期高齢者が、定年退職等で被用者保険から国民健康保険へ移ることによって、「国民健康保険に高齢者が偏る」ことになる
・さらに、国民健康保険の保険者間でも、都市部と地方では前期高齢者の割合にも差が出る
・そこで、前期高齢者の偏在により生ずる各医療保険制度間及び各保険者間の負担の不均衡を是正するため、前期高齢者に係る保険者間の費用負担を調整する制度が設けられている
ポイントは、偏りが2段階で生じることです。まず制度間(被用者保険と国民健康保険)で偏り、次に国民健康保険の保険者間(都市部と地方)でも偏ります。
調整の仕組みは次のとおりです。
保険者 →(前期高齢者納付金等)→ 社会保険診療報酬支払基金 →(前期高齢者交付金)→ 保険者
納付する側には「前期高齢者納付金」と「前期高齢者関係事務費拠出金」があります。
「社会保険診療報酬支払基金」が各医療保険の保険者から納付金を集め、それを保険者(特に国民健康保険を優先に)に対し交付金として交付することで、保険者間の費用負担を調整しています。
出発点も到着点もどちらも「保険者」である点が特徴です。後期高齢者の場合は、交付先が後期高齢者医療広域連合になります。前期高齢者は各保険者に加入したままだからこそ、保険者どうしでお金を回す形になるということです。
具体例
定年退職して国民健康保険に移る人が多い市町村には、支払基金から前期高齢者交付金が優先的に交付されます。

支払基金を通る4つのお金の表。受け取る側が保険者か広域連合か市町村かで見分けます
試験のポイント
簡単にいうと
5年ではありません。ここが直接問われます。
厚生労働大臣は、国民の高齢期における適切な医療の確保を図る観点から、医療費適正化を総合的かつ計画的に推進するため、全国医療費適正化計画(6か年の計画)を定めます。
都道府県についても同様に、6年ごとに6年を1期として医療費適正化計画を定めなければならないという規定があります。
試験では、都道府県は医療費適正化基本方針に即して「5年ごとに、5年を1期として」都道府県医療費適正化計画を定める、という誤りの選択肢が出題されたことがあります。正しくは「6年ごとに6年を1期として」です。
計画は作りっぱなしにはなりません。厚生労働大臣は、全国医療費適正化計画の期間の終了の日の属する年度の翌年度において、当該計画の目標の達成状況及び施策の実施状況の調査及び分析を行い、当該計画の実績に関する評価を行い、その結果を公表することとなっています。
評価を行うのが「終了の日の属する年度の翌年度」である点も細かい論点です。期間が終わってすぐではなく、翌年度に振り返るということになります。
医療費適正化の中身としては、糖尿病等の生活習慣病の患者・予備群の減少、平均在院日数の短縮などが挙げられます。病気になる人を減らし、入院を短くすることで医療費の伸びを抑えるという発想です。
具体例
簡単にいうと
健診の対象は「加入者」。被保険者だけではありません。
特定健康診査をめぐる制度は3段階で組み立てられています。
特定健康診査等基本指針
厚生労働大臣は、特定健康診査の適切かつ有効な実施を図るための基本的な指針(特定健康診査等基本指針)を定めます。
特定健康診査等実施計画
各医療保険の保険者は、特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する計画(6か年の計画)を定めなければなりません。医療費適正化計画と同じ6か年です。
特定健康診査等の実施
保険者は、特定健康診査等実施計画に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、40歳以上の加入者に対し、特定健康診査等を行わなければなりません。
年齢は40歳以上です。そして対象となる「加入者」には、医療保険の被保険者のみならず、その被扶養者も含まれます。専業主婦・主夫であっても40歳以上であれば対象になるということです。
用語の意味も押さえておきます。
・特定健康診査 … 糖尿病その他の政令で定める生活習慣病に関する健康診査
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試験のポイント
・特定保健指導 … 特定健康診査の結果により健康の保持に努める必要がある者に対し行われる保健指導(例えば栄養指導など)
定義に「糖尿病その他の政令で定める生活習慣病」と書かれている点が特徴です。がん検診のような一般的な健診ではなく、生活習慣病に的を絞った健診だということになります。
労働安全衛生法の一般健康診断とは別の制度です。あちらは事業者が労働者に対して行う義務、こちらは医療保険の保険者が加入者に対して行う義務です。会社員は両方の対象になり得ます。
具体例
会社員に扶養されている42歳の配偶者も、健康保険組合が実施する特定健康診査の対象になります。
試験のポイント
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