大和銀行事件
最高裁第一小法廷・1982年10月7日・最一小判昭57.10.7

なる子ちゃんの判例解説動画
プレミアム4:02賞与は「支給日に在籍している人」にだけ支給する——この支給日在籍要件を定めた就業規則を有効と認めた最高裁判決です。査定期間に在籍していても、支給日前に退職すれば賞与はもらえない、という実務上も重要なルールを確立しました。
事案の概要
Y銀行は業績査定に基づいて年2回賞与を支給しており、前年10月から3月までの分を6月に、4月から9月までの分を12月に支払っていました。支給日に在籍する者だけに賞与を払う慣例が以前からありましたが、就業規則には明記されておらず、後に従業員組合の要請でこの慣例を明文化する規則改訂が行われました。Xは5月末に退職したため、6月15日支給の賞与も12月10日支給の賞与も受け取れず、支払いを求めて提訴しました。
- 慣行支給日に在籍する者のみに賞与を支給する取扱いが慣例として存在していました
- 規則改訂5月1日、従業員組合の要請で慣行を就業規則に明文化しました
- 退職Xが5月末に退職しました。6月・12月の各支給日には在籍していません
- 提訴査定期間に在籍していた分の賞与の支払いを求めて提訴しました
- 最高裁支給日在籍要件は合理性を有し有効であり、Xに受給権はないと判断しました
争点
賞与の査定期間に在籍していた労働者でも、支給日に在籍していなければ賞与を受け取れない——そう定めた就業規則の規定(支給日在籍要件)は有効なのでしょうか。
判旨
判決文からの引用(原文のまま)
Y銀行においては、本件就業規則の改訂前から年2回の決算期の中間時点を支給日と定めて当該支給日に在籍している者に対してのみ右決算期間を対象とする賞与が支給されるという慣行が存在し、右規則の改訂は単にY銀行の従業員組合の要請によって慣行を明文化したにとどまるものであって、その内容においても合理性を有するというのであり、右事実関係のもとにおいては、Xは、Y銀行を退職したのちを支給日とする各賞与については受給権を有しないとした原審の判断は、結局正当として是認することができる。
結論
支給日に在籍する者にのみ賞与を支給するという取扱いは、従来からの慣行を明文化したものであり内容にも合理性があるため有効です。したがって、査定期間に在籍していても支給日前に退職した労働者は、賞与の受給権を持ちません。
関連法令の解説
労働基準法24条1項(賃金全額払の原則)
賃金は通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならないと定める規定です。支給日在籍要件があると「働いた査定期間分の賃金が支払われないのは全額払違反では?」という疑問が生じますが、本判例の立場では、そもそも支給日に在籍しない者には賞与の受給権自体が発生しないため、全額払の原則の問題にはなりません。試験でもこの理屈でひっかけが作られます。
身近な例え
マラソン大会の完走メダルに似ています。コースの大部分を走っていても、ゴール地点(支給日)にいなければメダルはもらえません。「ここまで走った分だけメダルの一部をちょうだい」とは言えない、というルールをあらかじめ決めておくことが許される、というイメージです。
なる子ちゃんのざっくりまとめ
賞与って「査定期間に働いた分の後払い」ってイメージがあるけど、この判例は「支給日にいる人だけがもらえる」というルールを有効って言ったんだよ。ポイントは、①支給日在籍要件は昔からの慣行を明文化しただけで内容も合理的だから有効、②だから支給日前に辞めた人にはそもそも受給権が発生しない、③受給権がないから労基法24条の全額払違反にもならない、の流れ。試験では「全額払の原則に違反して無効」ってひっかけてくるから、「有効!」って即答できるようにしてね!
◎ 選択式で狙われるポイント
「査定期間に働いた分は賞与をもらえるはず」という直感を裏切る判例です。賞与の受給権発生は支給日在籍が基準であり、この要件を定める就業規則は合理的で有効です。賃金全額払の原則(労基法24条1項)違反にもならない、という結び付けまでセットで問われます。
- ▶支給日在籍要件を定める就業規則の規定は「その内容においても合理性を有する」として有効です。「無効であり労基法24条1項の全額払の原則に違反する」とする記述は誤りです(H22-労基3Aの出題パターン)。
- ▶査定期間の全部または一部に在籍していても、支給日に在籍していなければ賞与の受給権は発生しません。
- ▶本件は退職直前に規則が改訂された事案ですが、従来の慣行の明文化にすぎない点が合理性を支える事情とされました。
穴埋めで問われるキーフレーズ
- 「慣行を明文化したにとどまるものであって、その内容においても合理性を有する」
- 「退職したのちを支給日とする各賞与については受給権を有しない」
出題実績
- H22-労基3A
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