関西医科大学研修医事件
最高裁第二小法廷・2005年6月3日・最二小判平17.6.3

なる子ちゃんの判例解説動画
プレミアム4:45「研修医は勉強しに来ているのだから労働者ではない」と言えるでしょうか——臨床研修中の研修医にも労基法・最低賃金法上の労働者性を認めた最高裁判決です。教育目的と労働者性は両立する、という判断枠組みが試験で問われます。
事案の概要
医師国家試験に合格した直後の研修医が、大学病院の2年間の臨床研修プログラムに従事していました。研修当初は原則として午前7時30分から午後10時まで病院内での研修に従事するものとされ、病院からは月額6万円の奨学金と1回1万円の副直手当が支払われるのみでした。研修医側は、自分は労基法・最低賃金法上の労働者に当たるのに最低賃金に満たない金員しか受け取っていないとして、差額賃金の支払いを求めて提訴しました。
- 研修開始医師国家試験合格後、大学病院で2年間の臨床研修に従事しました
- 長時間従事原則7時30分から22時まで病院内で研修し、支給は月6万円の奨学金等のみでした
- 提訴最低賃金に満たないとして差額賃金の支払いを請求しました
- 最高裁指揮監督下の労務提供と評価できる限り研修医も労働者に当たると判断しました
- 結論病院は最低賃金と同額の賃金を支払う義務を負うとされました
争点
臨床研修プログラムに従って大学病院で医療行為等に従事する研修医は、労働基準法9条・最低賃金法上の「労働者」に当たるでしょうか。
判旨
判決文からの引用(原文のまま)
研修医は、医師国家試験に合格し、医籍に登録されて、厚生大臣の免許を受けた医師であって、医療行為を業として行う資格を有しているものであるところ、(中略)この臨床研修は、医師の資質の向上を図ることを目的とするものであり、教育的な側面を有しているが、そのプログラムに従い、臨床研修指導医の指導の下に、研修医が医療行為等に従事することを予定している。
そして、研修医がこのようにして医療行為等に従事する場合には、これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり、病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り、上記研修医は労働基準法9条所定の労働者に当たるものというべきである。
(中略)Xは、Y病院の指揮監督の下で労務の提供をしたものとして労働基準法9条所定の労働者に当たり、最低賃金法2条所定の労働者に当たるというべきであるから、Y病院は、同法5条2項により、Xに対し、最低賃金と同額の賃金を支払うべき義務を負っていたものというべきである。
結論
研修医の医療行為等は、病院開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に持ちます。病院開設者の指揮監督の下でこれを行ったと評価できる限り、研修医は労基法9条の労働者に当たり、最低賃金法上の労働者にも当たるため、病院は最低賃金と同額の賃金を支払う義務を負います。
関連法令の解説
労働基準法9条(定義)
「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいうと定めています。使用者の指揮命令下で労働力を提供し、その対償として賃金を受けること(使用従属性)が判断の核心です。本判決は、名目が「研修」「奨学金」であっても、実態が指揮監督下の労務提供であれば労働者に当たることを示しました。
最低賃金法2条・5条2項
最低賃金法の「労働者」の定義は労基法と同一で、最低賃金額に達しない賃金の定めは無効となり、最低賃金と同額の定めをしたものとみなされます。本件では研修医が最低賃金法上の労働者にも当たるとされ、病院は最低賃金と同額の賃金の支払義務を負うと結論づけられました。
身近な例え
料理人見習いがレストランの厨房で、シェフの指示どおりに毎日お客さんに出す料理を作っているところを想像してください。「修行だから」と呼び方を変えても、店の営業のために店の指示で働いている実態は変わりません。学びの場であることと、働き手であることは、両立するのです。
なる子ちゃんのざっくりまとめ
「研修だから労働者じゃない」は通用しないよ、っていうのがこの判例。研修医が患者さんに医療行為をすれば、それはどうしても病院のための労務の遂行っていう側面を持つんだ。だから病院の指揮監督の下でやってると評価できる限り、労基法9条の労働者に当たる。本件では、病院が決めた時間と場所、指導医の指示、しかも奨学金に源泉徴収までしてた事実が決め手になったんだ。試験では「教育的側面が強いから労働者に当たらない」ってひっかけが定番で、答えは×。あと最低賃金法の労働者の定義は労基法と同じ、ってところもセットで覚えてね!
◎ 選択式で狙われるポイント
「臨床研修には教育的側面がある」ことは労働者性を否定する理由にならない、というのが最大のひっかけです。病院指定の時間・場所での従事、指導医の指示、支払金員への源泉徴収といった事実が指揮監督下の労務提供を裏づけました。労基法と最低賃金法の労働者の定義が同一である点もセットで問われます。
- ▶H29-5オは「教育的側面が強いから研修医は労働者に当たらない」とする記述で、正答は×です。教育的側面があっても、指揮監督下の労務遂行と評価できる限り労働者に当たるのが判例です。
- ▶労基法9条の労働者とは、事業または事務所に「使用される者」で「賃金を支払われる者」をいいます。最低賃金法の労働者の定義も労基法と同一である点を押さえましょう。
- ▶労働者性を裏づけた具体的事実——病院が定めた時間・場所での従事、指導医の指示、奨学金等への源泉徴収——の組み合わせで判断された点も出題されやすいところです。
穴埋めで問われるキーフレーズ
- 「病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有する」
- 「病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り」
- 「労働基準法9条所定の労働者に当たる」
出題実績
- H29-労基5オ
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