国鉄郡山工場事件
最高裁第二小法廷・1973年3月2日・最二小判昭48.3.2

なる子ちゃんの判例解説動画
プレミアム4:44年休をどう使おうと労働者の自由です——ただし自分の職場で全員一斉に休暇届を出して仕事を放り出す「一斉休暇闘争」は年休ではなくストライキです。この線引きと、時季変更権の判断単位が「所属事業場」であることを示した判例で、白石営林署事件と同じ日に出された年休二判決の片割れです。
事案の概要
国鉄の工場で働く職員らが、ある日について1日分または午前半日分の年休の時季指定をしました。工場長は時季変更権を行使しませんでしたが、職員らはその日の勤務時間開始前に、自分の所属工場ではない別の場所(駅)で行われた集団行動に参加しました。会社はこれを理由に賃金をカットしたため、職員らがカット分の支払いを求めて提訴しました。原審は、集団行動への参加が年休の成立を否定する理由になるとして請求の一部・全部を退けていました。
- 時季指定職員らが1日分または午前半日分の年休の時季を指定しました
- 時季変更権なし工場長は時季変更権を行使しませんでした
- 集団行動職員らが勤務時間開始前、所属工場以外の駅での集団行動に参加しました
- 賃金カット会社が年休の成立を否定して賃金をカットしました
- 最高裁他事業場の行動は年休の成否に影響しないとして原判決を破棄し、請求を全部認容しました
争点
年次有給休暇をどう使うかについて使用者は干渉できるのでしょうか。また、労働者が年休を使って所属事業場以外の事業場の争議行為に参加した場合、その年休は成立するのでしょうか。「事業の正常な運営を妨げる」かどうかはどの範囲を基準に判断するのでしょうか。
判旨
判決文からの引用(原文のまま)
年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である、とするのが法の趣旨であると解するのが相当である。
(中略)いわゆる一斉休暇闘争とは、これを、労働者がその所属の事業場において、その業務の正常な運営の阻害を目的として、全員一斉に休暇届を提出して職場を放棄・離脱するものと解するときは、その実質は、年次休暇に名を藉りた同盟罷業にほかならない。
したがつて、その形式いかんにかかわらず、本来の年次休暇権の行使ではないのであるから、これに対する使用者の時季変更権の行使もありえず、一斉休暇の名の下に同盟罷業に入つた労働者の全部について、賃金請求権が発生しないことになるのである。
しかし、以上の見地は、当該労働者の所属する事業場においていわゆる一斉休暇闘争が行なわれた場合についてのみ妥当しうることであり、他の事業場における争議行為等に休暇中の労働者が参加したか否かは、なんら当該年次有給休暇の成否に影響するところはない。
けだし、年次有給休暇の権利を取得した労働者が、その有する休暇日数の範囲内で休暇の時季指定をしたときは、使用者による適法な時季変更権の行使がないかぎり、指定された時季に年次休暇が成立するのであり、労基法三九条三項但書にいう「事業の正常な運営を妨げる」か否かの判断は、当該労働者の所属する事業場を基準として決すべきものであるからである。
結論
年休の利用目的は労基法の関知するところではなく、休暇をどう使うかは労働者の自由です。所属事業場での一斉休暇闘争は実質がストライキであり年休権の行使ではありませんが、他の事業場の争議行為に参加したかどうかは年休の成否に影響しません。「事業の正常な運営を妨げる」かどうかは、当該労働者が所属する事業場を基準に判断します。
関連法令の解説
労働基準法39条1項・2項(年次有給休暇の発生)
雇入れの日から6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に10労働日の年休を与えなければならず、以後は継続勤務年数に応じて日数が加算されます。要件を満たせば年休権は法律上当然に発生し、使用者の承認は不要である、というのが年休二判決の共通の出発点です。
労働基準法39条5項(時季指定権と時季変更権)
使用者は労働者の請求する時季に年休を与えなければならず、ただし請求された時季に与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り、他の時季に変更できます。判決当時は同条3項でしたが、条文の位置が動いただけで内容は同じです。本判例は、この「事業の正常な運営」を所属事業場単位で判断すべきことを明らかにしました。
労働基準法39条(年休の利用目的)
労基法には利用目的を制限する規定がありません。だからこそ「利用目的は労基法の関知しないところ」という結論になります。ただし、年休に名を借りて自分の職場を一斉に放棄する行為は、そもそも年休権の行使とは評価されない、という限界が引かれています。
身近な例え
有給を取って何をするかは本人の自由——旅行でも通院でもデモへの参加でもかまいません。ただし、部署の全員が示し合わせて同じ日に有給を出し、その日にその部署の仕事を止めること自体が目的なら、それはもう「休暇」ではなくストライキ。よその部署のイベントに顔を出すのとは、話がまったく別なのです。
なる子ちゃんのざっくりまとめ
年休をどう使うかは労働者の自由——これは白石営林署事件と共通のフレーズだよ。この郡山工場事件がプラスして示したのが「事業場を単位に考える」という視点なんだ。自分の所属する事業場でみんな一斉に休暇届を出して仕事を止めたら、それは年休じゃなくて実質ストライキ。だから時季変更権の出番もないし、参加者全員に賃金請求権が発生しない。でも、よその事業場の争議行為に参加しただけなら年休はちゃんと成立する。そして「事業の正常な運営を妨げる」かどうかも、会社全体じゃなくて所属事業場を基準に判断するんだ。白石営林署とセットで「年休二判決」って呼ばれるから、役割分担を意識して覚えてね!
◎ 選択式で狙われるポイント
同日に出された白石営林署事件が「年休権の性質・成立要件」を担当するのに対し、本件は「利用目的の自由」と「事業場を単位とする判断」を担当します。①所属事業場の一斉休暇闘争は年休ではない(賃金請求権も発生しない)、②他事業場の争議行為への参加は年休の成否に影響しない、③「事業の正常な運営を妨げる」は所属事業場基準——この3点が対になっています。
- ▶一斉休暇闘争が年休の行使にならないのは「当該労働者の所属する事業場で」行われた場合に限られます。他事業場の争議行為に参加しただけなら年休は成立します。この事業場の切り分けが最大のポイントです。
- ▶所属事業場での一斉休暇闘争は実質がストライキなので、使用者の時季変更権の行使もありえず、参加者全員について賃金請求権が発生しません。「時季変更権を行使すべきだった」とする記述は誤りです。
- ▶「事業の正常な運営を妨げる場合」(労基法39条5項ただし書)の判断単位は、企業全体ではなく当該労働者の所属する事業場です。
穴埋めで問われるキーフレーズ
- 「年次休暇の利用目的は労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由である」
- 「その実質は、年次休暇に名を藉りた同盟罷業にほかならない」
- 「他の事業場における争議行為等に休暇中の労働者が参加したか否かは、なんら当該年次有給休暇の成否に影響するところはない」
- 「「事業の正常な運営を妨げる」か否かの判断は、当該労働者の所属する事業場を基準として決すべき」
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