社労士になる子ちゃん
労働基準法重要度S管理監督者の深夜割増賃金

ことぶき事件

最高裁第二小法廷・2009年12月18日・最二小判平21.12.18

ことぶき事件の当事者関係図
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なる子ちゃんの判例解説動画

プレミアム4:52

「管理職には残業代が出ない」の正確な範囲を確定した判例です。労基法41条2号の管理監督者でも、深夜労働(午後10時〜午前5時)の割増賃金は請求できるとしました。理由は、41条が外すのは「長さ」の規制で、深夜割増は「時間帯」の規制だからです。H25選択式で3空欄が丸ごと出た超頻出判例です。

事案の概要

美容室・理容室を経営する会社の総店長として勤務していた人が、店長手当月3万円を受け取り、他の店長の約1.5倍の給与を得ていました。退職の際に営業秘密が記載された顧客カードを無断で持ち出して転職先で使用するなどしたため、会社が損害賠償を請求したのに対し、本人は在職中の深夜割増賃金等の支払を求めて争いました。管理監督者に当たる労働者が深夜割増賃金を請求できるかが正面から問題となりました。

  1. 勤務総店長として勤務し、店長手当と他の店長の約1.5倍の給与を受けていました
  2. 退職・持出し退職時に顧客カードを無断で持ち出し、転職先で使用しました
  3. 訴訟会社の損害賠償請求に対し、本人が在職中の深夜割増賃金等を請求しました
  4. 争点化管理監督者に深夜割増賃金の規定が適用されるかが争われました
  5. 最高裁41条2号は37条4項の適用を除外しないとして、深夜割増賃金の請求を認めました

争点

労働時間・休憩・休日の規定が適用除外となる管理監督者(労基法41条2号)は、深夜労働の割増賃金(37条4項)を請求できるでしょうか。

判旨

判決文からの引用(原文のまま)

労基法における労働時間に関する規定の多くは、その長さに関する規制について定めており、同法37条1項は、使用者が労働時間を延長した場合においては、延長された時間の労働について所定の割増賃金を支払わなければならないことなどを規定している。

他方、同条3項(現在は4項)は、使用者が原則として午後10時から午前5時までの間において労働させた場合においては、その時間の労働について所定の割増賃金を支払わなければならない旨を規定するが、同項は、労働が1日のうちのどのような時間帯に行われるかに着目して深夜労働に関し一定の規制をする点で、労働時間に関する労基法中の他の規定とはその趣旨目的を異にすると解される。

(中略)年少者に係る深夜業の規制について定める61条をみると、同条4項は、上記各事業については同条1項ないし3項の深夜業の規制に関する規定を適用しない旨別途規定している。こうした定めは、同法41条にいう「労働時間、休憩および休日に関する規定」には、深夜業の規制に関する規定は含まれていないことを前提とするものと解される。

以上によれば、労基法41条2号の規定によって同法37条3項(現在は4項)の適用が除外されることはなく、管理監督者に該当する労働者は同項に基づく深夜割増賃金を請求することができるものと解するのが相当である。

結論

労基法41条が適用除外とするのは労働時間の「長さ」に関する規制(労働時間・休憩・休日)であり、深夜割増賃金(37条4項)は労働の「時間帯」に着目した規制で趣旨目的が異なります。年少者の深夜業規制(61条)が適用除外を別途規定していることも、41条の適用除外に深夜業規制が含まれない前提の表れです。したがって管理監督者も深夜割増賃金を請求できます。

関連法令の解説

労働基準法41条2号(適用除外)

監督もしくは管理の地位にある者等については「労働時間、休憩および休日に関する規定」を適用しない、と定めます。本判決は、この文言に深夜業の規制は含まれないと解釈しました。管理監督者に時間外・休日の割増賃金が不要なのはこの条文のためですが、その射程は「長さ」の規制までです。

労働基準法37条4項(深夜の割増賃金)

午後10時から午前5時までの労働に2割5分以上の割増賃金を義務づける規定です。本判決は、これを「1日のうちのどのような時間帯に労働が行われるか」に着目した規制であり、労働時間の長さの規制とは趣旨目的が異なると位置づけました。判決当時は37条3項で、現在は4項に対応する点も条番号のひっかけ候補です。

身近な例え

高速道路の「速度制限」と「夜間騒音規制」の違いに似ています。特別許可車が速度制限を免除されても、深夜に住宅街で騒音を出してよいことにはなりません。「どれだけ走るか(長さ)」のルールと「いつ走るか(時間帯)」のルールは別物で、片方の免除がもう片方に及ばないのです。

なる子ちゃん

なる子ちゃんのざっくりまとめ

「管理職は残業代ゼロ」ってよく聞くけど、正確には違うんだよね。労基法41条2号の管理監督者に適用されなくなるのは「労働時間・休憩・休日」の規定、つまり労働時間の「長さ」に関する規制だけ。深夜割増賃金(37条4項)は「どの時間帯に働いたか」に着目した別の趣旨の規制だから、管理監督者にもちゃんと適用されるんだ。だから時間外・休日の割増賃金は請求できないけど、深夜の割増賃金は請求できる。年休も適用されるよ。H25の選択式ではこの判旨から「長さ」「午後10時から午前5時まで」「適用しない」の3つが丸ごと空欄で出たから、判旨は音読レベルで覚えてね!

選択式で狙われるポイント

管理監督者に「適用されない」のは時間外・休日の割増賃金、「適用される」のは深夜割増賃金と年次有給休暇——この振り分けがすべてです。理由づけは「長さ」の規制と「時間帯」の規制の趣旨目的の違いにあります。H25選択式では判旨から3つの空欄(長さ/午後10時から午前5時まで/適用しない)が丸ごと出題されました。

  • H25選択式では本判例の判旨から3空欄が出題されました——A「長さ」、B「午後10時から午前5時まで」、C「適用しない」です。判旨の言い回しを丸ごと押さえましょう。
  • 管理監督者に適用除外となるのは労働時間・休憩・休日の規定です。深夜割増賃金(37条4項)と年次有給休暇(39条)は適用されます。「割増賃金の規定が一切適用されない」とする肢は誤りです。
  • 補強論拠として、年少者の深夜業規制(61条4項)が特定事業への適用除外を「別途」規定していることが挙げられました。41条だけで深夜業まで除外されるなら、61条4項の別途規定は不要のはず、という論理です。

穴埋めで問われるキーフレーズ

  • 労基法における労働時間に関する規定の多くは、その長さに関する規制について定めており
  • 労働が1日のうちのどのような時間帯に行われるかに着目して深夜労働に関し一定の規制をする点で、(中略)趣旨目的を異にする
  • 「労働時間、休憩および休日に関する規定」には、深夜業の規制に関する規定は含まれていない

出題実績

  • H25選-労基A・B・C
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