協同組合グローブ事件
最高裁第三小法廷・2024年4月16日・最三小判令6.4.16

なる子ちゃんの判例解説動画
プレミアム4:42外国人技能実習の監理団体で働く指導員への事業場外みなし労働時間制の適用が争われた最新判例です。業務日報の提出だけを根拠に「労働時間を算定できる」と評価した高裁の判断を最高裁が違法とし、差し戻しました。阪急トラベルサポート事件と正反対の方向の事情がそろった事案として対比で覚えましょう。
事案の概要
外国人技能実習の監理団体に雇用された指導員は、実習実施者への月2回以上の訪問指導などに従事していました。訪問の予約など自分でスケジュールを管理し、会社から随時具体的な指示を受けたり報告をしたりすることはなく、直行直帰も自分の判断で許されていました。月末には始業・終業時刻や訪問先などを記した業務日報を提出していました。指導員がみなし労働時間制は無効と主張して時間外等の賃金を請求し、会社は事業場外業務の一部は「労働時間を算定し難いとき」に当たると反論しました。
- 業務内容実習実施者への月2回以上の訪問指導等に従事していました
- 働き方訪問予約など自らスケジュールを管理し、自分の判断で直行直帰していました
- 報告随時の指示・報告はなく、月末に業務日報を提出して確認を受けていました
- 提訴指導員がみなし制は無効だとして時間外・休日・深夜の賃金を請求しました
- 最高裁日報のみを重視してみなし制の適用を否定した原審を違法とし、高裁に差し戻しました
争点
労働者が自らスケジュールを管理し、使用者と随時の具体的な指示・報告のやり取りもなかった事業場外業務について、業務日報の提出があることを理由に「労働時間を算定し難いとき」に当たらないと判断できるでしょうか。
判旨
判決文からの引用(原文のまま)
Xは、本件業務に関し、訪問の予約を行うなどして自ら具体的なスケジュールを管理しており、所定の休憩時間とは異なる時間に休憩をとることや自らの判断により直行直帰することも許されていたものといえ、随時具体的に指示を受けたり報告をしたりすることもなかったものである。
このような事情の下で、業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、業務に関する指示および報告の方法、内容やその実施の態様、状況等を考慮すれば、Xが担当する実習実施者や1か月当たりの訪問指導の頻度等が定まっていたとしても、Y社において、Xの事業場外における勤務の状況を具体的に把握することが容易であったと直ちにはいい難い。
(中略)原審は、XがY社に提出していた業務日報に関し、①その記載内容につき実習実施者等への確認が可能であること、②Y社自身が業務日報の正確性を前提に時間外労働の時間を算定して残業手当を支払う場合もあったことを指摘した上で、その正確性が担保されていたなどと評価し、もって本件業務につき本件規定の適用を否定したものである。
しかしながら、上記①については、単に業務の相手方に対して問い合わせるなどの方法を採り得ることを一般的に指摘するものにすぎず、実習実施者等に確認するという方法の現実的な可能性や実効性等は、具体的には明らかでない。上記②についても、(中略)Y社が一定の場合に残業手当を支払っていた事実のみをもって、業務日報の正確性が客観的に担保されていたなどと評価することができるものでもない。
結論
労働者が自らスケジュールを管理し、直行直帰も許され、随時の具体的な指示・報告がなかった事情のもとでは、訪問頻度等が決まっていても、事業場外の勤務状況を具体的に把握することが容易だったとは直ちにはいえません。業務日報の記載を相手方に確認できる可能性や、会社が日報前提で残業手当を払った例があることだけでは、日報の正確性が客観的に担保されていたとは評価できません。
関連法令の解説
労働基準法38条の2第1項(事業場外労働のみなし労働時間制)
事業場外で業務に従事し労働時間を算定し難いときは、所定労働時間(または業務遂行に通常必要とされる時間)労働したものとみなす規定です。阪急トラベルサポート事件では具体的指示・常時連絡・詳細報告の三段構えから適用が否定されましたが、本件は自律的なスケジュール管理と随時の指示・報告の不存在という逆方向の事情があり、日報提出だけでは算定可能と即断できないとされました。両判例を事情の対比で整理するのが効率的です。
身近な例え
毎日の行き先を自分で決めて直行直帰する外回りの営業さんが、月末にまとめて日報を出すところを想像してください。日報には時間が書いてあっても、それが正確かどうかを会社が確かめる現実的な手段がなければ、「働いた時間を把握できていた」とは言い切れませんよね。日報という紙があるだけでは足りない、というのがこの判例です。
なる子ちゃんのざっくりまとめ
阪急トラベルサポート事件と対で覚える判例だよ。あっちは日程もマニュアルもガチガチで常時連絡+詳細報告だったから「算定できる」方向。こっちは自分でスケジュールを組んで直行直帰OK、随時の指示・報告もなし。この状況だと、訪問回数が決まってて業務日報を出してても、勤務状況の把握が「容易だったと直ちにはいい難い」んだ。最高裁が注意したのは、日報の中身を相手先に確認「できるかも」ってだけじゃ実効性が不明だし、会社が日報ベースで残業代を払った例があるだけじゃ日報の正確性が担保されてたとは言えないってこと。しかも結論は「みなし制適用」って確定させたんじゃなくて差戻しだからね。そこを混同しないように気をつけて!
◎ 選択式で狙われるポイント
「業務日報を提出していた=労働時間を算定できる」と即断してはいけない、というのが核心です。阪急トラベルサポート事件(みなし制適用否定)と対になる判例で、自律的なスケジュール管理と随時の指示・報告なしという事情があれば、日報があっても把握容易とは直ちにいえません。適用を認めたのではなく、原審の判断手法を違法として差し戻した点にも注意しましょう。
- ▶判断枠組みは阪急トラベルサポート事件と同じ二本柱(業務の性質・内容・遂行の態様等と、指示・報告の方法・内容・実施の態様等)です。「性質、内容やその遂行」の部分が空欄補充の素材になります。
- ▶「容易であったと直ちにはいい難い」という結論の言い回しも空欄補充で問われます。訪問指導の頻度等が定まっていたことだけでは把握容易の根拠になりません。
- ▶本判決はみなし制の適用を確定させたのではなく、業務日報の正確性担保を具体的に検討しないまま適用を否定した原審の判断手法を違法として差し戻したものです。「適用が認められた」とする記述はひっかけです。
穴埋めで問われるキーフレーズ
- 「自ら具体的なスケジュールを管理しており、随時具体的に指示を受けたり報告をしたりすることもなかった」
- 「業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、業務に関する指示および報告の方法、内容やその実施の態様、状況等を考慮」
- 「勤務の状況を具体的に把握することが容易であったと直ちにはいい難い」
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