エヌ・ビー・シー工業事件
最高裁第三小法廷・1985年7月16日・最三小判昭60.7.16

なる子ちゃんの判例解説動画
プレミアム5:28生理休暇を取った日を「出勤不足」に数えて精皆勤手当を減らすのは違法か——という問いに答えた判例です。最高裁は、生理休暇は無給が原則で、欠勤扱いにするかは労使の合意次第とし、取得を著しく困難にして法の趣旨を失わせる場合でない限り減額は適法としました。東朋学園事件との対比で問われる定番判例です。
事案の概要
機械織布作業に従事する現場作業員の女性労働者らが、2日間の生理休暇を請求して取得しました。会社では所属労働組合との間で精皆勤手当を支給する合意がありましたが、生理休暇の取得日を手当の支給基準上の出勤不足日数に数える扱いとしたため、彼女らの精皆勤手当は減額支給されました。労働者らは減額された精皆勤手当の未払分の支払を求めて提訴しました。
- 生理休暇取得現場作業員の女性労働者らが2日間の生理休暇を請求して取得しました
- 減額支給取得日が精皆勤手当の出勤不足日数に数えられ、手当が減額されました
- 提訴労働者らが減額分の未払手当の支払を請求しました
- 争点化生理休暇の欠勤扱いによる経済的不利益が労基法違反かが争われました
- 最高裁生理休暇は無給が原則で、著しく取得を困難にしない限り減額は適法と判断しました
争点
生理休暇の取得日を精皆勤手当の支給基準上の出勤不足日数に数え、手当を減額支給することは労基法(現68条)に違反するのでしょうか。また、生理休暇は有給なのでしょうか、無給なのでしょうか。
判旨
判決文からの引用(原文のまま)
労働基準法67条(現在は68条)は、所定の要件を備えた女子労働者が生理休暇を請求したときは、その者を就業させてはならない旨規定しているが、年次有給休暇については同法39条4項(現在は9項)においてその期間所定の賃金等を支払うべきことが定められているのに対し、生理休暇についてはそのような規定が置かれていないことを考慮すると、その趣旨は、当該労働者が生理休暇の請求をすることによりその間の就労義務を免れ、その労務の不提供につき労働契約上債務不履行の責めを負うことのないことを定めたにとどまり、生理休暇が有給であることまでをも保障したものではないと解するのが相当である。
(中略)これを出勤扱いにするか欠勤扱いにするかは原則として労使間の合意に委ねられているものと解することができる。
(中略)労働者が生理休暇を取得しそれが欠勤扱いとされることによって何らかの形で経済的利益を得られない結果となるような措置ないし制度は、その趣旨、目的、労働者が失う経済的利益の程度、生理休暇の取得に対する事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合して、生理休暇の取得を著しく困難とし同法が女子労働者の保護を目的として生理休暇について特に規定を設けた趣旨を失わせるものと認められるのでない限り、これを同条に違反するものとすることはできないというべきである。
結論
生理休暇の規定は就労義務の免除と債務不履行責任を負わないことを定めたにとどまり、有給までは保障していません。特段の合意がなければ休暇中の賃金請求権はなく、出勤扱いか欠勤扱いかは原則として労使の合意に委ねられます。欠勤扱いによる経済的不利益措置も、諸般の事情を総合して生理休暇の取得を著しく困難とし、法が生理休暇を特に規定した趣旨を失わせると認められない限り、違法ではありません。したがって精皆勤手当の減額は許されます。
関連法令の解説
労働基準法68条(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)
生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならないと定めます。生理であること自体だけでは請求できず、「就業が著しく困難」であることが要件です。請求は暦日単位である必要はなく、半日・時間単位でもよいとされています。本判決は、この条文が有給までは保障していないことを、年休(39条)には賃金支払規定があるのに生理休暇にはないという条文構造から導きました。判決当時は67条だった点も要注意です。
労働基準法12条3項・39条10項(産前産後休業との違い)
産前産後休業の期間は、平均賃金の計算では控除され、年休の出勤率算定では出勤したものとみなされるという特別扱いがあります。生理休暇にはこうした規定がなく、本判決はこの違いを「出勤扱いにするか欠勤扱いにするかは労使の合意次第」という結論の根拠にしました。保護の厚さの差が試験でも狙われます。
身近な例え
皆勤ボーナスのあるジムに例えると、体調不良で休んでよい権利はあっても、その日の分の「皆勤ボーナス」まで満額もらえるとは限らない、という話です。休む権利=ペナルティを受けない権利であって、休んだ日も出たことにしてもらえる権利ではありません。ただし、ボーナスの減らし方があまりに大きくて誰も休めなくなるような設計なら、そこで初めてアウトになります。
なる子ちゃんのざっくりまとめ
生理休暇って有給なの?無給なの?——答えは「無給が原則」だよ。年休には労基法39条に賃金を払えって規定があるのに、生理休暇(68条)にはそれがない。だから生理休暇の効果は「就労義務を免れて、債務不履行の責任を負わない」ことまでで、有給の保障はないんだ。出勤扱いにするか欠勤扱いにするかも、原則として労使の合意次第なんだ。精皆勤手当の減額みたいな不利益も、取得を著しく困難にして法の趣旨を失わせるレベルじゃない限り適法とされたよ。東朋学園事件(賞与まるごとゼロ→無効)との対比が最大のポイント。「減額どまりなら有効、ゼロにしたら無効」ってイメージで整理してね。あと条番号は当時67条→現在68条だから、ひっかけに注意!
◎ 選択式で狙われるポイント
①生理休暇は無給が原則です(年休と違い賃金支払規定がありません)。②出勤扱いか欠勤扱いかは労使の合意次第です。③不利益措置は「取得を著しく困難とし趣旨を失わせる場合」でない限り適法です。この3段論法で理解しましょう。賞与ゼロを無効とした東朋学園事件との対比(減額どまりなら有効)が最重要のひっかけです。条番号の現行対応(67条→68条)にも注意しましょう。
- ▶H23-7Eは「生理休暇は有給であることまでをも保障したものではない」とする判例の立場をそのまま問うもので、答えは○です。生理休暇=無給が原則、を軸に判断しましょう。
- ▶生理休暇は産前産後休業と異なり、平均賃金の計算(12条3項)や年休の出勤率算定(39条)で特別の保護を受けません。産前産後休業(保護あり)との対比が問われやすいところです。
- ▶不利益措置の適法性判断は「趣旨・目的、失う経済的利益の程度、事実上の抑止力の強弱等諸般の事情を総合」して行います。精皆勤手当の減額どまりの本件は適法、賞与全額不支給の東朋学園事件は無効——結論の違いを事案の違いで説明できるようにしておきましょう。
穴埋めで問われるキーフレーズ
- 「労務の不提供につき労働契約上債務不履行の責めを負うことのないことを定めたにとどまり、生理休暇が有給であることまでをも保障したものではない」
- 「出勤扱いにするか欠勤扱いにするかは原則として労使間の合意に委ねられている」
- 「生理休暇の取得を著しく困難とし(中略)特に規定を設けた趣旨を失わせるものと認められるのでない限り」
出題実績
- H23-労基7E
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