十和田観光電鉄事件
最高裁第二小法廷・1963年6月21日・最二小判昭38.6.21

なる子ちゃんの判例解説動画
プレミアム4:28会社の承認なしに市議会議員になった従業員を懲戒解雇できるのか——労基法7条(公民権行使の保障)の射程を示した最高裁判決です。「懲戒解雇は無効、ただし普通解雇はあり得る」という結論の切り分けが試験の定番論点です。
事案の概要
労働組合の執行委員長だった従業員が、組合の推薦を受けて市議会議員選挙に立候補して当選しました。本人は会社に議員就任を伝え、公務に就いている間の休職扱いを申し出ましたが、会社は「会社の承認を得ないで公職に就任した従業員は懲戒解雇する」という就業規則の規定を適用して懲戒解雇しました。従業員側はこの就業規則条項と懲戒解雇の無効を主張して提訴しました。
- 立候補労働組合の執行委員長が組合の推薦で市議会議員選挙に立候補しました
- 当選当選し、会社に議員就任を報告して休職扱いを申し出ました
- 懲戒解雇会社が「無承認の公職就任は懲戒解雇」の就業規則条項を適用しました
- 提訴従業員が就業規則条項と懲戒解雇の無効を主張して提訴しました
- 最高裁条項は労基法7条の趣旨に反し無効であり、懲戒解雇は許されないと判断しました
争点
従業員が会社の承認を得ずに公職(市議会議員など)に就任した場合に、それを理由として懲戒解雇できる旨を定めた就業規則の条項は有効なのでしょうか。
判旨
判決文からの引用(原文のまま)
懲戒解雇なるものは、普通解雇と異なり、譴責、減給、降職、出勤停止等とともに、企業秩序の違反に対し、使用者によって課せられる一種の制裁罰であると解するのが相当である。
(中略)労働基準法7条が、特に、労働者に対し労働時間中における公民としての権利の行使および公の職務の執行を保障していることにかんがみるときは、公職の就任を使用者の承認にかからしめ、その承認を得ずして公職に就任した者を懲戒解雇に附する旨の前記条項は、右労働基準法の規定の趣旨に反し、無効のものと解すべきである。
従って、所論のごとく公職に就任することが会社業務の逐行を著しく阻害する虞れのある場合においても、普通解雇に附するは格別、同条項を適用して従業員を懲戒解雇に附することは、許されないものといわなければならない。
結論
公職への就任を使用者の「承認」にかからせ、承認なく就任した者を懲戒解雇するという就業規則の条項は、労働時間中の公民権行使・公の職務の執行を保障した労基法7条の趣旨に反して無効です。公職就任が会社業務を著しく阻害するおそれがある場合でも、普通解雇はあり得ますが、この条項による懲戒解雇は許されません。
関連法令の解説
労働基準法7条(公民権行使の保障)
労働者が労働時間中に選挙権その他公民としての権利を行使し、または公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合、使用者は拒んではならないと定めています。ただし書により、権利の行使や職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することはできます(解説上は日にちの変更も含むとされます)。本判決は、この条文の趣旨が「公職就任を使用者の承認制にして違反者を懲戒解雇する」ような就業規則を許さないことを明らかにしました。
身近な例え
町内会の防災訓練に参加する権利をアルバイト先が「店長の許可制」にして、無断参加したらクビ、と張り紙するようなものです。時間のやりくり(シフトの時刻変更)をお願いするのは構わなくても、参加そのものを許可制にして罰を科すのはルールの趣旨に反する——そういう線引きです。
なる子ちゃんのざっくりまとめ
この判例のポイントは「懲戒解雇はダメ、でも普通解雇は別」っていう切り分けだよ。労基法7条は労働時間中の公民権行使や公の職務の執行を保障してるから、公職に就くこと自体を会社の承認制にして、無承認なら懲戒解雇っていう就業規則は趣旨に反して無効なんだ。ただし、公職就任で会社の業務が著しく回らなくなるような場合に普通解雇を検討するのは別問題。試験では「業務を阻害するなら懲戒解雇できる」ってひっかけが出るから、懲戒解雇と普通解雇を絶対に混ぜないでね!あと、公民権行使の時間を有給にするか無給にするかは当事者の自由ってところもセットで覚えてね!
◎ 選択式で狙われるポイント
「懲戒解雇は不可だが普通解雇は格別(あり得る)」という対比が最大のひっかけです。業務阻害のおそれがあっても懲戒解雇に振り替えることはできません。懲戒解雇=企業秩序違反への制裁罰であり、普通解雇とは性質が別という整理も前提として押さえてください。
- ▶公職就任が会社業務の遂行を著しく阻害するおそれがある場合でも、許されるのは普通解雇までです。当該条項による懲戒解雇はできません。「著しく阻害するなら懲戒解雇できる」とあれば誤りです。
- ▶労基法7条本文は、労働者が労働時間中に公民権行使・公の職務執行に必要な時間を請求した場合、使用者は拒めないと定めています。ただし書により、権利行使や職務執行に妨げがない限り時刻の変更は可能です。
- ▶公民権行使に要した時間を有給にするか無給にするかは、当事者の自由に委ねられています(法は賃金の支払いまでは義務づけていません)。
穴埋めで問われるキーフレーズ
- 「企業秩序の違反に対し、使用者によって課せられる一種の制裁罰」
- 「右労働基準法の規定の趣旨に反し、無効のものと解すべきである」
- 「普通解雇に附するは格別、同条項を適用して従業員を懲戒解雇に附することは、許されない」
出題実績
- H23-労基1C
- H29-労基5エ
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