八千代交通事件
最高裁第一小法廷・2013年6月6日・最一小判平25.6.6

なる子ちゃんの判例解説動画
プレミアム4:58解雇が無効とされて職場復帰した労働者の年休について、解雇で働けなかった期間を出勤率の算定でどう扱うかを決めた判例です。最高裁は「出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含める」とし、労働者に不利にならない扱いを示しました。判決後に行政通達も修正された、選択式出題済みの重要判例です。
事案の概要
タクシー会社が乗務員に解雇の意思表示をして就労を拒みましたが、乗務員は解雇無効を争って勝訴し、約2年4カ月後に職場復帰しました。復帰後まもなく年休の時季指定をして5日間就労しなかったところ、会社は「前年度に全労働日の8割以上出勤の要件を満たしていない」として当該5日間を欠勤扱いにし賃金を支払いませんでした。乗務員は未払賃金の支払等を求めて提訴しました。
- 解雇会社が解雇の意思表示をし、就労を拒みました
- 勝訴・復帰解雇無効の裁判で勝訴し、約2年4カ月後に職場復帰しました
- 年休取得復帰後まもなく時季指定をして5日間就労しませんでした
- 欠勤扱い会社が「前年度8割出勤の要件不充足」として賃金を支払いませんでした
- 最高裁解雇で就労できなかった日は出勤日数に算入して全労働日に含めると判断しました
争点
無効な解雇のように、労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労できなかった日は、年休の出勤率(全労働日の8割以上出勤)の算定上、全労働日に含まれるのでしょうか。
判旨
判決文からの引用(原文のまま)
法39条1項および2項における前年度の全労働日に係る出勤率が8割以上であることという年次有給休暇権の成立要件は、法の制定時の状況等を踏まえ、労働者の責めに帰すべき事由による欠勤率が特に高い者をその対象から除外する趣旨で定められたものと解される。
(中略)前年度の総暦日の中で、就業規則や労働協約等に定められた休日以外の不就労日のうち、労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえないものは、不可抗力や使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日等のように、当事者間の衡平等の観点から出勤日数に算入するのが相当でなく全労働日から除かれるべきものは別として、上記出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものと解するのが相当である。
無効な解雇の場合のように労働者が使用者から正当な理由なく就労を拒まれたために就労することができなかった日は、労働者の責めに帰すべき事由によるとはいえない不就労日であり、(中略)法39条1項および2項における出勤率の算定に当たっては、出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれるものというべきである。
結論
8割出勤要件は、労働者の責めに帰すべき事由による欠勤率が特に高い者を年休の対象から除外する趣旨です。無効な解雇によって就労を拒まれた日は労働者の責めに帰すべき事由による不就労日ではありませんから、出勤率の算定では「出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含める」ことになります。ただし不可抗力や使用者側起因の経営・管理上の障害による休業日等は、衡平の観点から全労働日から除かれます。
関連法令の解説
労働基準法39条1項・2項(8割出勤要件)
年休権の成立には、前年度(初年度は雇入れから6カ月)の全労働日の8割以上の出勤が必要です。本判決はこの要件を「欠勤率が特に高い者を対象から除外する趣旨」と位置づけ、労働者に帰責性のない不就労日は原則として出勤日数に算入して全労働日に含める、という判断基準を導きました。
行政通達との関係
本判決以前の行政通達では、使用者の責に帰すべき事由による休業日は全労働日に含まれない扱いとされていました。本判決を受けて通達の解釈が修正され、正当な理由なく就労を拒まれた日は出勤日数に算入して全労働日に含めることとされています。判例が通達を変えさせた例として押さえておくと記憶に残ります。
身近な例え
皆勤賞の判定で、学校側の工事で休校になった日を「欠席」に数えたら不公平ですよね。しかも「その日はカウント外」にするのではなく「登校した日」として数えてあげるのがこの判例の扱い。行けなかった原因が学校側にある以上、生徒の成績(出勤率)を下げる材料にはしない、という発想です。
なる子ちゃんのざっくりまとめ
解雇されて裁判で勝って戻ってきたのに、「キミ、去年8割出勤してないから年休ないよ」って言われたらひどいよね。最高裁は、無効な解雇で働けなかった日は労働者のせいじゃないんだから、出勤率の計算では「出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含める」としたよ。ここ超重要——「全労働日から除く」んじゃなくて、「全労働日に入れた上で出勤扱いにする」の。分母にも分子にも入るから出勤率は下がらないんだ。例外として、不可抗力や使用者側起因の経営・管理上の障害による休業日みたいに衡平の観点で別扱いのものは全労働日から除かれる。H26の選択式でこの判旨がそのまま出たから、言い回しごと覚えてね!
◎ 選択式で狙われるポイント
「全労働日に含めない」でも「全労働日に含めるが欠勤扱い」でもなく、「全労働日に含めた上で出勤日数にも算入」——この二重の扱いが正確に問われます。H26選択式では「全労働日に含まれるもの」の部分がそのまま穴埋めで出ました。判決を受けて行政通達が改められた点も特徴です。
- ▶無効解雇で就労できなかった日の扱いは「全労働日に含め、かつ出勤日数にも算入」です。分子・分母の両方に入れるので出勤率を下げません。H26選択式では「全労働日に含まれるもの」が空欄Aとして出題されました。
- ▶全労働日から除かれる例外は「不可抗力や使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日等」=当事者間の衡平の観点から出勤日数に算入するのが相当でないものです。
- ▶8割出勤要件の趣旨は「労働者の責めに帰すべき事由による欠勤率が特に高い者」を除外することです。この趣旨の言い回しも穴埋め候補です。
穴埋めで問われるキーフレーズ
- 「労働者の責めに帰すべき事由による欠勤率が特に高い者をその対象から除外する趣旨」
- 「出勤日数に算入すべきものとして全労働日に含まれる」
- 「不可抗力や使用者側に起因する経営、管理上の障害による休業日等」
出題実績
- H26選-労基A
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