標準報酬月額の決定と改定|資格取得時・定時決定・随時改定・育休等終了時を1枚で区別
入口は4つ。取り違えが起きるのは「いつ決まるか」ではなく「いつから使うか」のほうです。

保険料も傷病手当金も老齢厚生年金も、すべて標準報酬月額をもとに計算されます。その標準報酬月額が決まる入口は4つあり、入社したときの資格取得時決定、毎年1回の定時決定、報酬が大きく動いたときの随時改定、育児休業等から復帰したときの育児休業等終了時改定です。試験でよく問われるのは決定の手続そのものではなく、「その標準報酬月額をいつからいつまで使うのか」という適用期間のほうです。4つを横に並べて、契機・要件・適用開始月を縦にそろえて比べるのが最短の整理法です。
① 資格取得時決定:入社したとき
被保険者の資格を取得したときは、初任給などの報酬の見込額をもとに標準報酬月額を決めます。ここで決めた額をいつまで使うかが独特で、1月から5月までに資格を取得した場合はその年の8月まで、6月から12月までに取得した場合は翌年の8月までとなります。年の後半に入社した人は1年以上同じ額を使う計算です。「次の定時決定が効くまで」と考えると理解しやすくなります。
② 定時決定:毎年1回の見直し
毎年7月1日現在の被保険者について、その年の4月・5月・6月に受けた報酬の平均をもとに標準報酬月額を決め直します。この3か月のうち、支払基礎日数が17日以上の月だけを平均の対象にします。決まった額はその年の9月から翌年8月まで使います。「4・5・6月で決めて9月から使う」という時間差が定時決定の特徴で、ここを問う出題が繰り返されています。なお6月1日から7月1日までに資格を取得した人は、その年の定時決定の対象外です。
③ 随時改定:3つの要件を全部満たしたときだけ
定時決定を待たずに改定するのが随時改定です。要件は3つあり、そのすべてを満たす必要があります。1つ目は固定的賃金に変動があったこと、2つ目は変動月以後の継続した3か月の報酬の平均から算出した標準報酬月額が、現在の等級と2等級以上の差を生じること、3つ目はその3か月ともに支払基礎日数が17日以上であることです。改定後の標準報酬月額は変動があった月から起算して4か月目から使います。「2等級以上」「固定的賃金」「3か月とも17日以上」の3点セットで覚えてください。
④ 育児休業等終了時改定:1等級差でよく、申出が要る
育児休業等を終えて復職すると、時短勤務などで報酬が下がることがあります。このとき随時改定の要件を満たさなくても改定できるのが育児休業等終了時改定です。随時改定と違って1等級以上の差があればよく、固定的賃金の変動も必要ありません。ただし被保険者本人の申出が前提になります。復職後3か月の報酬をもとに、育児休業等終了日の翌日から起算して2か月を経過した日の属する月の翌月から改定後の額を使います。産前産後休業終了時にも同じ仕組みがあります。
⑤ 年金額を守る「みなし措置」もセットで
育児休業等終了時改定で標準報酬月額が下がると、そのぶん将来の年金額も下がってしまいます。これを防ぐのが厚生年金保険の養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置です。3歳未満の子を養育する期間について、標準報酬月額が下がる前の額で年金額を計算してくれます。保険料は下がった額で計算されるので、被保険者にとっては一方的に有利な仕組みです。改定とセットで問われることがあるので、対で押さえておくと安全です。
◎ 試験対策のポイント
- ▶定時決定は7月1日現在の被保険者が対象。4・5・6月の報酬で決め、9月から翌年8月まで使う
- ▶定時決定の平均は、支払基礎日数17日以上の月だけを使う
- ▶随時改定は「固定的賃金の変動」「2等級以上の差」「3か月とも17日以上」の3つを全部満たすことが必要
- ▶随時改定の適用は、変動月から起算して4か月目から
- ▶育児休業等終了時改定は1等級差でよく、固定的賃金の変動も不要。ただし本人の申出が要る
- ▶資格取得時決定は「1〜5月取得ならその年の8月まで」「6〜12月取得なら翌年8月まで」
- ▶養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置で、年金額だけは下がる前の額で計算される
よくある質問
Q. 残業代が増えただけでも随時改定になりますか?
A. なりません。随時改定の要件のひとつは「固定的賃金の変動」です。基本給や役職手当、通勤手当などの固定的な部分が変わったことが前提で、残業代のような非固定的賃金だけが増減しても随時改定の対象にはなりません。ただし固定的賃金の変動があった場合は、平均を計算するときに残業代も含めて計算します。
Q. 4月に入社した人は、その年の定時決定の対象になりますか?
A. なります。定時決定の対象外になるのは、6月1日から7月1日までに資格を取得した人と、7月・8月・9月に随時改定などが行われる人です。4月入社なら4・5・6月の報酬がそろうので、通常どおり定時決定の対象になります。
Q. 育児休業等終了時改定は必ず行われますか?
A. いいえ。被保険者本人の申出が必要です。時短勤務で報酬が下がっても、申出をしなければ改定されません。保険料が下がる一方で将来の年金額に影響しうるため、本人の意思にゆだねる建て付けになっています。なお年金額については養育期間のみなし措置で守られます。
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