ひとことで言うと
労働者が指定した年休の日を、会社が別の日にずらすことができる権利です。使えるのは「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。
解説
時季変更権とは、労働者が請求した時季に年次有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合に、使用者が他の時季にこれを与えることができる権利をいいます。単に忙しいという程度では行使できず、代替要員の確保が困難であるといった具体的な支障が必要です。
くわしく解説
労働者が時季指定権を行使して年休の日を特定した場合、使用者は原則としてその日に休ませなければなりません。例外として認められているのが時季変更権です。
行使できるのは「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。あくまで正常な運営を妨げる場合であり、単に人手が欲しいという程度では認められません。
関連判例として時事通信社事件があります。約1か月の長期かつ連続の年休を事前の調整なしに時季指定した事案で、最高裁は、長期であるほど事業運営に支障をきたす蓋然性が高くなるため、使用者にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ない、と判断しました。長期連続の年休については、使用者の裁量が広めに認められるということです。
また、1時間単位の短い年休の請求であっても、事業の正常な運営を妨げるときは時季変更権を行使できます。時間単位だから行使できない、ということはありません。
これに対し、計画的付与によって定められた日については、時季変更権を行使できません。計画年休協定には民事的効力があり、労働者の時季指定権も使用者の時季変更権も封じられるためです。
具体例で考えよう
運送会社の事務員が繁忙期の棚卸し当日に年休を指定したところ、代わりの担当者がどうしても手配できませんでした。この場合、会社は「翌週にしてほしい」と時季変更権を行使できます。単に「なんとなく人手が欲しい」程度の理由では変更できません。
試験対策ポイント
行使要件は「事業の正常な運営を妨げる場合」。長期かつ連続の年休を事前調整なく指定した場合は使用者に裁量的判断の余地が認められる(時事通信社事件)。時間単位の年休請求に対しても行使は可能。計画的付与で定められた日には行使できない
関連法令
労働基準法39条5項ただし書、時事通信社事件(最判平4.6.23)
関連用語
「労働基準法」の他の用語
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