健康保険の保険給付マップ|本人と家族で名前が変わる給付を1枚で対応づける
家族側は原則「家族療養費」に集約。本人にしかないのは、所得を補う傷病手当金と出産手当金です。

健康保険は給付の数が多いうえに、被保険者本人向けと被扶養者向けで名前が変わります。療養の給付に対して家族療養費、移送費に対して家族移送費、というように「家族」がつくかどうかで呼び分けるのが基本です。ただし単純に対応するものばかりではなく、家族側には存在しない給付もあります。ここを分ける原理はひとつで、「医療そのものを提供する給付は家族にもある」「所得を補う給付は本人だけ」ということです。この線引きを先に押さえると、表の空欄が理屈で埋まります。
① 医療の給付:家族側は「家族療養費」に集約される
本人が病院で治療を受けるときは療養の給付、立て替えたときは療養費、入院の食事は入院時食事療養費、先進医療などは保険外併用療養費という具合に、場面ごとに給付の名前が分かれています。ところが家族側では、これらがまとめて家族療養費として支給されます。家族の分は「家族療養費という1つの器」に入っていると考えると、覚える量が一気に減ります。訪問看護と移送だけは家族訪問看護療養費・家族移送費という独立した名前が用意されています。
② 所得を補う給付は本人だけ
傷病手当金と出産手当金には、家族版がありません。これらは働けない期間の収入を補うための給付なので、そもそも被保険者として働いていない被扶養者には支給する理由がないからです。試験では「家族傷病手当金」といった存在しない給付名で出題されることがあるので、名前だけで判断せず「所得補填かどうか」で切り分けてください。一方、出産育児一時金には家族出産育児一時金があります。こちらは出産費用という実費に対する給付で、所得補填ではないためです。
③ 高額療養費は世帯で合算できる
自己負担が一定額を超えたときに払い戻される高額療養費は、本人にも家族にも適用されます。さらに同一世帯で同じ月に複数の自己負担があるときは合算でき、直近12か月に3回以上高額療養費を受けていると4回目からは自己負担限度額が下がる多数回該当という仕組みもあります。労災には自己負担そのものがないため高額療養費の仕組みがない、という対比も押さえておくと理解が立体的になります。
④ 資格を失った後も続く給付がある
被保険者の資格を喪失すると原則として給付は受けられなくなりますが、例外があります。資格喪失時に傷病手当金や出産手当金を受けている、または受けられる状態にあった人は、一定の要件のもとで引き続き受給できます。これが資格喪失後の継続給付です。また出産育児一時金や埋葬料についても、資格喪失後の一定期間内であれば支給される場合があります。「辞めたら即終了ではない」という点を押さえてください。
⑤ 組合独自の付加給付
健康保険組合は、法定の給付に上乗せして独自の給付を行うことができます。これを付加給付といい、一部負担還元金や傷病手当金付加金などがあります。全国健康保険協会(協会けんぽ)にはこの仕組みがなく、組合健保だけの特徴です。「組合は上乗せできる、協会はできない」という違いは、保険者の比較問題で問われます。
◎ 試験対策のポイント
- ▶家族側の医療給付は原則「家族療養費」に集約される(入院時食事療養費・保険外併用療養費もその中)
- ▶訪問看護と移送だけは家族訪問看護療養費・家族移送費という独立した名前がある
- ▶所得を補う傷病手当金と出産手当金に家族版はない
- ▶出産育児一時金には家族出産育児一時金がある(実費の給付なので家族にもある)
- ▶高額療養費は世帯合算ができ、多数回該当で4回目から限度額が下がる
- ▶資格喪失後の継続給付があるため、資格を失っても即座に打ち切られるわけではない
- ▶付加給付は健康保険組合だけの仕組みで、協会けんぽにはない
よくある質問
Q. なぜ家族には傷病手当金がないのですか?
A. 傷病手当金は「働けない期間の所得を補う」ための給付だからです。被扶養者はそもそも被保険者として働いているわけではないので、補うべき所得がありません。同じ理由で出産手当金にも家族版はありません。逆に、出産費用という実費に対する出産育児一時金には家族版があります。
Q. 家族が入院したときの食事代は、どの給付になりますか?
A. 家族療養費に含まれて処理されます。本人の場合は入院時食事療養費という独立した給付名になりますが、家族側は原則として家族療養費という1つの器にまとめられています。給付の中身が違うのではなく、呼び方の建て付けが違うだけです。
Q. 労災には高額療養費のような仕組みはありますか?
A. ありません。労災の療養補償給付には自己負担そのものがないため、自己負担の上限を設ける必要がないからです。健康保険は原則3割の自己負担があるので、それが重くなりすぎないよう高額療養費が用意されています。
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